BPOという新しい選択肢
雇用の長所短所を理解する
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直接雇用Direct Employment
直接雇用は、社員として企業に直接雇用されることを意味します。メリットとしては、従業員との長期的な関係を築き、組織内での総合的なスキルや知識の蓄積が可能になることです。また、社員のモチベーションやロイヤルティの向上から勤続年数は長い傾向があります。一方でデメリットとしては、採用や教育プロセスにかかる時間やコスト、さらには交通費や福利厚生などのコストが恒常的に発生する点が挙げられます。
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人材派遣Temporary Staffing
派遣会社を通じて、事務職や技術職、建設業から医療関連業務まで幅広く、IT分野ではSESといった形態でエンジニアを必要する企業に一定期間派遣するサービスです。これを利用することで、企業はプロジェクトや短期間の業務において専門的な知識や技能を必要とする場合に適切な人材を迅速に迎え入れることができます。しかし、長期にわたって派遣会社を利用する場合、コストが高くなる可能性があります。また、2015年9月に改正された労働者派遣法の3年ルールがあり、企業及び雇用者にとって複雑な状況となっています。
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BPOBusiness Process Outsourcing
企業の業務プロセスの一部または全てを外部の専門業者に委託するビジネスモデルです。個別のタスクを外注するのではなく、一つの部門が抱える企画から生産、運用まで企業の所有する一つの事業を外注する手法です。BPOでは部門レベルの業務を一括してその分野に特化した業者に委託します。そのため、BPO先として業務を委託された企業は、業務を引き受けながら業務フローの改善を行い、最適化して生産性を向上させます。BPOを採用することで、企業は本来の事業にリソースを集中させることが可能となり、効率的な事業の成長につながります。業務プロセスが外部の組織に移行するため、管理が複雑になる可能性があります。そのため、BPO事業者との密接なコミュニケーションと、明確な業務指標の設定が不可欠になります。
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外注Outsourcing
外注は、企業が特定の業務を外部の業者に委託する点でBPOと共通していますが、その目的や範囲、関係性には大きな違いがあります。一般に短期的なプロジェクトや単発のタスクを専門業者に委託することを指します。特定のスキルやリソースが内部にない場合や、短期間での業務完了が求められる場合に、迅速に対応する場合に有効です。例えばウェブサイトの開発や広告キャンペーンの設計など、具体的な成果物の提供に焦点を当てています。初期費用などもありませんし、即時のニーズに対応するための費用対効果の高い解決策と言えます。
外注化によって難しいのは品質管理です。方針や方向性を適切に理解してもらえないと認識の違いや齟齬が生じやすいため、コミュニケーションコストがかかります。緊急を要する案件の場合は自社で修正したり、別の外注先を探すことが必要となる場合もあります。
直接雇用 | 派遣 | BPO | 外注 | |
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対応力 | 柔軟性がある | 依頼以外のことはできない | 柔軟性がある | 依頼以外のことはできない |
コスト | 一人当たり50〜100万円 | 派遣会社に上乗せされ割高に | 初期費用などは会社によるが中長期で見れば比較的安い | 会社による |
教育 | 入社後、一人ひとりのスキルに合わせた教育が必要 | 専門性の高いスキルがすぐ使える | クライアントに合わせたマニュアルに沿って教育される | 専門性の高いスキルがすぐ使える |
退職リスク | あり | なし | なし | なし |
契約 | 長期契約 | 労働者派遣契約(個別契約) | 委託契約 | 準委任契約 / 請負契約 |
失敗しないBPO企業の選び方
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BPOを導入する目的を明確にする
BPOの導入を検討する場合、まずは目的を明確にすることが重要です。コスト予算オーバー・人的リソース不足・サービス品質の低下・業務の属人化など、現在そして将来的に起こりうる自社の課題を抽出し、優先順位でリストアップしましょう。課題からBPO導入の目的を明確化することで、より具体的にBPO化すべき業務が見えてきます。例えばオペレーター部署の場合、属人化の解消が目的であれば部署全体のBPO化をし、コスト削減が目的の場合はヘルプデスクやチャットボットの導入などのBPOが考えられます。BPO導入がゴールにならないよう、BPO導入の目的を明確化し、改善する業務を具体的に検討しましょう。
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対応業務・専門性は合っているか
BPO企業の選定にあたり、まずはBPO化したい業務に対応しているか、専門ノウハウがあるか確認してください。専門ノウハウがあると業務スタートの段取りも良く、コストパフォーマンスも高いことが期待できます。 複数の業務をBPO化する場合は、幅広い業務をカバーできるBPO企業がベストですが、1つの業務をBPO化する場合は特化型のBPO企業を探してみてください。
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BPO導入後も定期的に進捗を確認する
BPOを失敗させないためには、導入後の定期的な進捗確認も必要です。チェック内容としては、以下の点に注意してください。
- 品質は維持向上されているか
- 運用ルールは守られているか
- コミュニケーションは健全か
品質や運用ルール、コミュニケーションでかかえる課題を、BPO企業・ユーザー両方の立場から出し合う機会を設け、ブラッシュアップしていきましょう。そのためには、目標やタスクを数値化したKPIを設定しておくとPDCAを回しやすくなります。BPOを導入したら任せっきりにならないよう、双方が適切なコミュニケーションをとり、常に課題を消しながらサービスを向上させていきましょう。
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実績やコストパフォーマンスは合っているか
実績の豊富さもチェックしましょう。実績は企業ホームページから事業開始年度・取引企業・導入事例などから確認できることもあります。実績が豊富であれば、ノウハウやスキルが蓄積され、トラブル対応などもスムーズです。また口コミから業務量・期間・品質レベルなども確認しておきましょう。特に品質はユーザーから生の声を知ることができるのでおすすめです。品質維持向上・クレーム等リスク管理・セキュリティ対策などの効果も確認し、費用だけではなく費用対効果で判断するようにしてください。BPO導入は長期利用になりますから、相場を極端に下回るような見積もりを出す会社より、安心して委託できる会社を選ぶようにしましょう。そのため見積もりを取る際は、業務量・納期・品質レベルなどの詳細を先方に伝え、精度の高い見積もりを取ると比較しやすくなります。
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セキュリティ対策は万全か
セキュリティ面の意識が高いサービスを選ぶことも非常に重要です。アウトソーシングよりも企業のコアな部分に触れる機会が多いBPOは、顧客情報や企業機密情報などを共有するシーンも珍しくありません。重要情報の外部流出リスクが高まるので、以下のような第三者機関からの認証を取得しているBPO企業を選びましょう。
- ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証
- プライバシーマーク
- DX認定事業者
万が一重要情報が外部流出してしまうと、企業にとっても顧客にとっても重大な損失となるので、セキュリティに対する意識は事前に必ずチェックしてください。
自社の課題を抽出しBPO化でどの課題を解決するか目的を明確化しましょう。対応範囲・実績・コスト・セキュリティーなどで複数のBPO企業を比較し、導入後も定期チェックをして常にブラッシュアップすることが重要です。この記事を参考に、BPO化を成功させ貴重な人的リソースを有効活用してください。