地域共創 企業誘致を地域の力へ ~IT企業・デジタル産業・人材育成で描く天草市の未来~

BPO取材記事地域共創地方自治体天草市

企業誘致を地域の力へ ~IT企業・デジタル産業・人材育成で描く天草市の未来~

熊本県の南西部に位置する天草市は、美しい海や豊かな自然に恵まれた地域です。令和3年度からIT企業の誘致に本格的に取り組み、企業誘致だけでなく、人材育成や進出後の定着支援にも力を入れながら、新たな産業の創出を推進しています。進出企業と地元企業との連携を重視し、地域全体の活性化につなげる取り組みを進めている点も特徴です。今回は、天草市産業政策課の渡辺様に、IT企業誘致へ取り組む背景や独自の支援体制、地域とのつながりを大切にした企業誘致の考え方について詳しく伺いました。

Interviewee

天草市 産業政策課 デジタルアート・企業誘致推進係

渡辺 大輔様

地域全体の活性化を目指す天草市の企業誘致

ーーまずは、天草市が企業誘致で大切にされている考え方について教えてください。

渡辺様:天草市では企業誘致を重要施策として進めていますが、進出企業だけが成長するのではなく、その効果が地元企業にも広がり、地域全体の活性化につながることを大切にしています。進出企業だけが雇用を伸ばし、人材が地元企業から流出してしまうような状況は望ましくありません。そのため、進出企業と地元企業がビジネスでつながり、ビジネスマッチングや好循環が生まれることを目指しています。
例えば、IT企業が地元企業のホームページ制作やSNS運用を手掛けたり、デジタル分野のコンサルティングを行ったりする事例も生まれています。なかには、地元の果樹園が製造する肥料を、進出したIT企業がホームページを活用して販売支援したことで、売上が約40倍に伸びた事例もありました。こうした成功事例を増やしながら、地域全体に相乗効果が広がる環境をつくっていきたいと考えています。

進出企業フェア
進出企業フェア

ーー進出企業と地元企業がつながる機会は、市が積極的につくっているのでしょうか。

渡辺様:はい。市が主催する『進出企業フェア』を毎年開催しており、進出企業にはブースを出展していただき、市民や地元企業との交流の場を設けています。
また、地域の経済団体とも連携し、進出企業による事業紹介や交流イベントも開催しています。さらに、カフェでお酒を飲みながら進出企業を含む参加者がゆるーく繋がる交流会なども含め、さまざまな場で企業同士、市民との接点が生まれるよう取り組んでいます。
もちろん、市が紹介するケースもありますが、交流をきっかけに企業同士が自発的につながり、新たな取引へ発展するケースも少なくありません。

進出企業フェア 進出企業フェア
コワーキング、サテライトオフィス

なぜ天草市はIT企業誘致へ舵を切ったのか

ーー令和3年度からIT企業誘致に本格的に取り組まれていますが、その背景を教えてください。

渡辺様:一番大きな理由は、市内で働く人の就職先の選択肢を増やしたかったからです。
これまで天草市には、製造業や医療・介護、建設業などの就職先はありましたが、IT系企業がなかったため、IT分野で働きたい人は市外へ転出せざるを得ない状況でした。「地元に残りたいけれど、希望する仕事がない。」そうした状況を変えるため、IT企業の誘致に取り組むことを決めました。
また、令和3年度はコロナ禍を経て、テレワークや地方分散への関心が高まり始めた時期でもあります。企業の働き方や拠点戦略が変化するタイミングだったこともあり、天草市としてもいち早く取り組みをスタートさせました。

ーー新たにIT企業誘致へ取り組むことに、不安はありませんでしたか。

渡辺様:当時は、不安よりも「まずやってみよう」という思いの方が大きかったですね。
企業へのアプローチはフォームマーケティングの手法を取り入れました。ターゲットとする企業数千社に対して、お問い合わせフォームなどを通じて直接アプローチしました。その中から面談を重ね、視察ツアーを実施し、進出につなげていきました。

ーーゼロからIT企業の誘致を進める中で、特に苦労されたことはありましたか。

渡辺様:最初の1社を迎えるまでが一番苦しかったですね。
企業からは、「何社誘致されていますか?実績は?」という質問を多くいただきました。当時はまだIT企業の誘致実績がなかったため、地方へ進出するにあたりその点が企業にとって不安材料になっていたと思います。
しかし、1社目の進出が実現してからは、企業から寄せられる反応も少しずつ変わっていきました。さらに、IT企業が利用できるコワーキングスペースやシェアオフィスの整備も並行して進め、受け入れ環境を整備しました。
また、市民向けのデジタルスキルアップ講座※を開催するなど、人材育成にも取り組み、進出企業が地域で人材を確保しやすい環境づくりを進めていきました。
※現在は市主導ではなく、民間企業が主催する講座に補助する形へ移行

進出企業と地域を結ぶ交流の仕組み

ーー企業は実際に現地を視察したうえで進出を決めるケースが多いのでしょうか。

渡辺様:はい。必ず現地に来ていただくようにしています。
実際に天草を見てもらうと、「想像していたよりも生活環境が整っている」という感想をいただくことが本当に多いです。市役所周辺には飲食店や病院、学校、コンビニなど生活に必要な施設が集まっており、企業の皆さんが抱いていたイメージとのギャップが良い意味で生まれています。
また、海や山が身近にあり、自然に囲まれた環境で仕事ができる点も大きな魅力です。
都会とは異なる働き方やライフスタイルを実感していただけることが、進出の後押しになっていると感じています。

天草市の立地環境

天草空港を利用可能
天草空港から熊本空港まで約20分
福岡方面からも空路でアクセス可能
熊本市方面へのアクセス
熊本市中心部から快速バス『あまくさ号』で約2時間30分
自然と生活環境が両立した地域
海や山など豊かな自然に囲まれながら、生活に必要な施設も整備
イルカウォッチング、倉岳

ーー視察では、地元企業との交流も大切にされているそうですね。

渡辺様:視察では観光地を案内するだけではなく、地元企業も訪問していただきます。地元企業の方々から天草の魅力を直接話していただいたり、ワークショップ形式で交流したり、一緒に食事を楽しんだりすることで、人と人とのつながりを築いていただいています。
進出後も「天草へまた来たい」と思える理由を一つでも多くつくることが重要だと考えています。実際に交流をきっかけとして新たなビジネスが始まるケースもあり、企業誘致だけでは生まれない地域との結び付きにつながっています。

ーー実際に進出を決めた企業からは、どのような点が評価されているのでしょうか。

渡辺様:立地や自然環境に加えて、「市の職員が熱心に対応してくれた」という声はよくいただきます。私たちは、企業の進出に際し、不安をできるだけ早く解消できるよう、スピード感を持った対応を心掛けています。
企業誘致は行政だけで成り立つものではありません。地元企業と一緒に企業へ寄り添いながら、一つひとつの要望に丁寧に対応することを大切にしています。

地域に新たな産業を根付かせるデジタルアートの取り組み

ーーIT企業誘致に加え、デジタルアート分野にも力を入れられています。この取り組みにはどのような狙いがあるのでしょうか。

渡辺様:IT企業誘致を進める中で、企業誘致だけでは企業が撤退するリスクもあります。そのため、企業を呼び込むだけではなく、地域に新しい産業そのものを生み出していくことが重要だと考えました。
そこで取り組み始めたのが、デジタルアートを軸とした産業創出です。人材育成やノウハウの蓄積も含めて取り組み、育った人材が天草で働ける環境をつくることを目指しています。IT企業誘致をさらに発展させる形で、ゲームや映像などエンターテインメント分野に絞った取り組みとして展開しています。

ーーその一環として、天草工業高校にCGを学べるコースを設けられたそうですね。

渡辺様:はい。デジタルアート事業における人材育成の柱として取り組んでいます。
現在は『CG系列』という位置付けですが、今後はさらに生徒を増やし、学科へ発展させていきたいと考えています。
一方で、CGを教えられる教員は限られています。そのため、市と学校の間に一般社団法人『デジタルアート天草』を設立し、民間企業のクリエイターを講師として派遣する仕組みを整えました。行政だけで完結するのではなく、民間企業とも連携しながら教育環境を整備しています。

CGを学んでいる授業風景の写真
天草工業高校CG系列

ーー卒業後に地域で活躍できる環境づくりについてはいかがでしょうか。

渡辺様:来年3月に初めての卒業生を送り出す予定ですが、私たちもまだ手探りで取り組んでいます。現在、ゲームや映像コンテンツ企業などを訪問し、生徒が制作したポートフォリオを持参して、「ぜひ求人を出してください」とお願いしています。
この業界は高卒採用が少ないと言われていますが、ポートフォリオを見ていただくと、「思っていた以上にレベルが高いですね」と評価いただくこともあります。3年間取り組んできたことが間違っていなかったのだと感じられた瞬間でした。
また、全国でもCGを学べる公立高校は限られており、「この系列ができたから天草に残ることを決めた」という生徒もいます。
天草が好きでも、希望する仕事がなく市外へ進学・就職するしかなかった若者に、新たな選択肢を提供できていることは大きな意義だと感じています。

天草ときめきっ★ラブアクション! ~海辺の輝く街☆天草への企業進出プロジェクト~
デジタルアートの島創造事業紹介動画トップ

進出企業の定着と成長を支える支援体制

ーー進出後の企業に対しては、どのような支援を行われているのでしょうか。

渡辺様:進出後も、人材確保など企業が抱える課題について相談を受けながら、必要な支援を行っています。私たちはハローワークにも一緒に伺い、求人票の書き方や、求職者の目に留まりやすい表現などについても相談しながらサポートしています。
また、企業ごとの要望に応じて、市役所内の担当部署や地元企業をご紹介することもあります。通信関連企業であれば情報政策課につないだり、養殖場の水温を遠隔で管理する装置を実証していただく地元企業を水産振興課から紹介していただいたりと、それぞれの企業に合わせた支援を心掛けています。
進出後1~2年ほどは特に相談が多いため、企業が地域に定着できるよう、できる限りサポートしています。

採用活動の支援
ハローワークへの同行
求人票の作成や表現方法へのアドバイス
行政・地域との連携支援
市役所内の関係部署への橋渡し
地元企業とのビジネスマッチング
働く環境の整備
コワーキングスペースやシェアオフィスの整備

地域とともに未来をつくる企業誘致

ーー企業誘致を進める中で、地域にはどのような変化を感じていますか。

渡辺様:まだまだ市民の皆さんへの認知は十分とは言えません。ITやデジタルアートの仕事は目に見えにくいため、どのような仕事なのか伝えることの難しさを感じています。
一方で、天草工業高校での取り組みなどを通じて、新しい産業づくりへの認知は少しずつ広がってきていると感じています。今後もイベントなどを通じて、市民の皆さんと一緒にこの取り組みを盛り上げていきたいと考えています。

ーー最後に、天草市への進出を検討している企業へメッセージをお願いします。

渡辺様:まずは一度、天草に来ていただきたいですね。景色や食、自然だけでなく、人の魅力もぜひ感じていただきたいと思っています。
私たちは、地元企業や市民との交流の機会づくりも含め、進出前から進出後までできる限りサポートしていきます。天草には『のさる』という、自分にとって良いことや大変なことでも一度受け入れる文化があります。地域の皆さんも温かく迎えてくださると思いますので、ぜひ天草の魅力を実際に感じていただき、その上で進出をご検討いただければと思います。

企業誘致PV「Free Style Amakusa」

天草市役所概要

自治体名 天草市
本社所在地 熊本県天草市東浜町8-1
担当部署 経済部 産業政策課 デジタルアート・企業誘致推進係
電話番号 0969-32-6786(デジタルアート・企業誘致推進係 直通)
FAX 0969-24-3501
MAIL [email protected]

出典:天草市役所

天草市詳細ページ

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