
採用業務の効率化や負担軽減を図る手段として、BPaaSの活用が注目されています。特に、採用管理システム(ATS)と外部オペレーターを組み合わせた「採用管理BPaaS」は、採用代行(RPO)とは異なる形で企業の採用活動を支援します。本記事では、BPaaS採用管理の概要やRPOとの違い、導入メリット、活用事例、導入時の注意点について詳しく解説します。
BPaaSについて、より詳しく知りたい方は以下の記事も合わせてご確認ください。
BPaaS採用管理とは

BPaaS採用管理とは、採用管理システム(ATS)などのツールと、採用業務に精通した専門人材を組み合わせ、採用プロセスを提供するサービスです。
具体的には、ATSを活用して応募者情報や選考状況を一元管理し、その情報をもとに、書類選考や面接調整、候補者への連絡、社内への報告などを外部のオペレーターが代行します。これにより、業務の属人化を防ぎながら、採用の流れを誰でも使いやすい形に整えることができます。
RPOとの違いは?

BPaaSは、単なるSaaSのようなツール提供型サービスとは異なり、業務オペレーション含めすべての工程をクラウド経由で実行できる点が特徴です。
また、RPO(Recruitment Process Outsourcing)と比べても、テクノロジーの活用によって業務の再現性や効率性が高いというメリットがあります。SaaSは企業側の運用負担が残り、RPOは属人的になりやすい一方で、BPaaSはシステムと人のハイブリッドによる標準化・自動化が可能です。
採用業務の課題とBPaaSの解決策
採用業務では、応募対応やデータ管理の負担が大きく、対応遅れやミスにつながることもあります。こうした課題の解決策として注目されているのがBPaaSです。具体的な課題とその対応策を紹介します。
書類選考・面接調整の負担をBPaaSで軽減
採用活動において特に負担が大きいのが、書類選考や面接日程の調整といった初期対応の業務です。たとえば、月間100件を超える応募がある企業では、これらの対応だけで1人の担当者が1日2〜3時間、月間にすると40〜60時間以上を費やすケースもあります。
BPaaSを導入すれば、外部オペレーターが標準化されたフローに沿ってこれらの業務を代行し、担当者の負担を大幅に軽減できます。これにより、対応漏れや調整ミスといったリスクも抑えられます。
属人的なデータ管理を一元化で解消
担当者ごとにExcelやメールで応募者情報を管理していると、選考状況の把握が難しく、担当者が変わった際の引き継ぎにも時間がかかります。応募者が月に50〜100名いる場合、面接日程や評価、連絡履歴の管理が煩雑になり、引き継ぎ作業に1人あたり5〜10時間以上かかることも珍しくありません。
BPaaSでは、ATS(採用管理システム)を活用し、応募者情報や選考の進捗を一元的に可視化します。面接評価や連絡履歴もシステム上に蓄積されるため、引き継ぎにかかる時間を従来の半分以下、場合によっては2〜3時間程度に抑えることも可能です。
急な大量採用にも柔軟に対応可能に
企業の成長にともない、採用ニーズが突発的に高まる場面は少なくありません。たとえば、新店舗のオープン時に3ヵ月で50〜100名の採用が必要になるケースでは、社内の人事担当者だけでは対応が追いつかず、選考の遅延や対応漏れが発生するリスクがあります。
BPaaSを活用すれば、外部の採用オペレーターとATSを組み合わせることで、1〜2週間程度で選考体制を構築し、1日あたり数十件の面接調整や進捗管理もカバー可能です。これにより、スピード感を持ちながら、質を保った採用活動を実現できます。
採用管理BPaaSの事例
ここでは、急成長中のスタートアップから大手企業まで、採用業務におけるBPaaS活用の実例をご紹介します。
HERP Hire導入(UPSIDER社事例)
急成長を遂げる決済サービス会社UPSIDER社では、採用に関する目線や方針をチーム内で統一し、データをもとに議論・意思決定を進めたいという課題を抱えていました。もともとHERP Hire上に採用情報を集約していた背景もあり、ツールとしての完成度や、HERP社が採用に強い会社であるという信頼感から導入を決定。導入後は、関係者全員が同じデータをもとに議論を始められるようになり、UI/UXの整った環境で、精度の高いアウトプットと施策の実行につながりました。
キャスタービズリクルーティング導入(テレビ東京コミュニケーションズ社事例)
テレビ東京コミュニケーションズ社では、採用実務の負担や進捗管理の遅れが課題となっていました。そこで、選考調整や進捗管理などの業務をまとめて依頼できる体制に魅力を感じ、キャスタービズリクルーティングを導入。業務の可視化と平準化が進んだことで、社内担当者は母集団形成や候補者への魅力づけといったコア業務に集中できるようになり、採用活動のスピードと質の両立が可能になりました。
HRクラウド「採用一括かんりくん」導入(ユナイテッド社事例)
ユナイテッド社では、他社のATSとRPOを併用していたものの、コストの二重化や選考参加率の低下、メールの不達といった課題を抱えていました。そこで、HRクラウド社のATSとRPOを導入することで、ツールの特性を踏まえた運用提案が受けられる点に魅力を感じ、「採用一括かんりくん」への切り替えを決定。導入後は、面接日程調整の工数が大幅に削減されたほか、LINEとの連携により候補者とのコミュニケーションも効率化されました。結果として、採用状況の可視化やチーム全体の業務効率が向上し、より戦略的な採用活動にリソースを割ける体制が整いました。
属人化解消の手段として注目されるBPO
属人化を解消するには、業務の標準化と再現性の確保が欠かせません。その手段として近年注目されているのが、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の活用です。「BPOは定型業務しか委託できない」と思われがちですが、実際にはその範囲は多岐にわたります。たとえば、SNS運用やキャンペーン施策の立案、目標設定の補助、メンタルヘルス対応、さらには設備の清掃や点検・修理といった現場寄りの業務まで、属人化しやすい領域でもBPO化が進んでいます。
これらの業務は、外部の専門知見を取り入れて再設計・マニュアル化することで、属人性を排除しつつ再現性や安定性を高められます。また、定型業務に限らず非定型業務も適切に切り出して委託すれば、社内リソースの最適な配置が可能となり、生産性の向上や持続可能な組織運営にもつながります。
採用領域でBPaaSを導入する際の注意点

採用領域でBPaaSを有効に活用するために、代表的な注意点を解説します。
既存のATSとの連携を確認する
現在使用しているATS(採用管理システム)と、BPaaS提供ベンダーのSaaSがスムーズに連携できるかを事前に確認することが重要です。自社で「HRMOS」や「ジョブカン採用管理」などを利用している場合、API連携が未対応だと、応募者情報や選考ステータスを手作業で転記する必要が生じます。
1件の情報入力に5〜10分かかるとすると、月間100件の応募があれば10〜15時間以上の手間が発生する計算です。こうした非効率が発生しないよう、データ形式やインポート機能、リアルタイム同期の有無などをあらかじめ確認しておくことが、円滑な運用の鍵を握ります。
外部化する業務範囲を明確にする
BPaaSでは、書類選考、面接調整、応募者対応、社内報告など多様な業務を外部化できますが、すべてを委託する必要はありません。応募受付や面接日程の調整など、1件あたり15〜30分かかるタスクを外部化するだけでも、月間100件の対応で25〜50時間の工数削減につながります。
一方で、候補者との最終面談や内定通知など、社内の判断や温度感が求められる業務は内製化する企業も多く見られます。このように「面接官の調整までは外部に任せ、実際の面接は社内で対応」といったタスク分担が典型です。業務範囲を曖昧にしたまま進めると、社内外での認識にズレが生じ、トラブルの原因となります。
成果の可視化やレポート方法を握る
BPaaSを導入する際は、単に業務を外部に任せるだけでなく、「見える化」の仕組みも確保する必要があります。たとえば、「週次で応募数・通過率・辞退率をレポートしてもらう」「月1回は改善提案を含むレビュー会議を実施する」といった具体的なルールを設けましょう。
KPIの一例としては、「応募数:100件」「書類通過率:30%」「一次面接通過率:50%」などを設定し、数値の変動をもとに改善点を議論する形が効果的です。KPIの設計や報告頻度が不明確だと、成果が見えづらくなり、業務全体がブラックボックス化するリスクがあります。
まとめ
採用管理BPaaSは、業務の効率化と標準化を実現し、担当者の負担軽減や大量採用への柔軟な対応を可能にします。導入には、システム連携や業務範囲の整理、成果の見える化を踏まえた運用設計が重要です。