解説記事 "属人化"が起こりやすい企業・業種と、対策としてのBPO活用

BPO属人化経営リスク

 

担当者の不在や退職によって業務が滞る「属人化」は、多くの企業にとって見過ごせない課題となっています。日常業務は問題なく回っていても、予期せぬ人事異動や急な休職によって業務が止まり、取引やサービスに支障が出るケースは少なくありません。

本記事では、属人化が起こりやすい企業や業種の特徴を取り上げ、その解消手段として注目されるBPO導入の効果を紹介します。

属人化が起こりやすい業種と企業規模別の傾向

2024年1月に実施された、株式会社NEXERとオクトパスの共同調査(※1)では、52.8%の企業が「属人化により業務の引き継ぎが困難」と実感していることが明らかになりました。

また、BLP合同会社が2025年に実施した500名調査(※2)では、大企業(1,001人以上)の92.81%が「属人化された業務がある」と回答しており、規模や業種を問わず属人化が広がっている実態が浮き彫りになっています。

属人化が特に顕著な業種には、以下が挙げられます。

  • 製造業(約95%):ベテラン職人の技術が形式知化されず、継承が属人に頼りがちである
  • 医療・福祉・介護(約87%):専門職の経験・判断に依存し、情報がチームに共有されにくい
  • 商社・卸売・小売(約88%):顧客対応など現場の判断が個人に依存するケースが多い

一方、企業規模別では以下のような傾向が見受けられます。

  • 小規模(1~50人):経営者・幹部中心の業務分担となりやすく、引き継ぎの仕組みが未整備なため属人化が起こりやすい
  • 中堅(51~300人):各部門にキーパーソンが存在し、標準化が途上なため属人化が業務効率を阻害しやすい
  • 大企業(300人以上):マニュアル化は進んでいるものの、専門部署や階層構造により情報共有が滞るケースがあり注意が必要

このように、業種や規模にかかわらず属人化が起きやすい環境が存在しており、多くの企業が「標準化・再現性のある業務構造」への対応を迫られている現状です。

(※1)PR TIMES|【"業務の属人化"その影響とは?】52.8%が、業務の属人化で「業務の引継ぎが困難」と回答

(※2)PR TIMES|【500人に調査】約8割が業務の非効率を実感:属人化と人手不足の実態を公表

属人化が一時的に機能する理由とは

属人化は一般的にリスクとされますが、一時的には機能的・効率的に作用する場合もあります。

経験者が即断できるスピード感があるため、緊急対応やトラブル処理では成果に直結しやすく、顧客や業務に迅速に応えることが可能です。スタートアップや新規プロジェクトでは、流動的な状況に柔軟に対応できる属人的な体制がむしろ効率的になることもあります。

また、教育・マニュアルコストがかからない分、短期的なコスト抑制ができる点も見逃せません。結果として、特定の人に任せることで他のメンバーは別の業務に集中できるようになる、という柔軟な役割分担も生まれます。

ただし、これらの利点は局所的かつ一時的なものであり、中長期的には標準化・再現性の確保のために仕組み変革が必要となる点は押さえておくべきです。

属人化がもたらす3つの経営リスク

reliance on individuals

属人化は短期的には効率的に見えることもありますが、長期的に見ると多くの経営リスクを伴います。ここでは、属人化が引き起こす代表的なリスクを3つ紹介し、放置による影響の深刻さを整理します。

担当者不在による業務停止リスク

属人化が進んだ部署では、特定の担当者しか対応できない業務が発生します。たとえば、顧客窓口を一人で担っていた担当者が急に入院した結果、得意先からの受注対応が滞り、納期遅延でクレームが相次いだ事例があります。

その際、代替要員に負担が集中し、現場のミスやストレスが増幅して、さらなる品質低下や顧客離れにつながったケースも見られます。目先の属人化は、最終的に契約機会の喪失といった明確な損失に直結します。

ノウハウ消失による競争力の低下

属人化した業務では、長年の経験や暗黙知が担当者の頭の中だけにとどまり、社内で共有されません。たとえば、経理部門で長年経費精算を担当していたベテラン社員が退職した際、後任が正しい判断基準を把握できず、経理処理が混乱し、監査で指摘を受けたという事例があります。

特に中小企業やスタートアップでは、「その人がいないと回らない」という状態が続くと、事業の成長余地がその担当者の処理能力に制約されます。改善や差別化のための知識が引き継がれず、競争力が低下するリスクが高まります。

組織の成長・再現性の阻害

属人化が深刻化すると、業務の標準化が進まず、他部署や他拠点への展開が困難になります。たとえば、ある販売部門では、トップセールスの担当者が自己流の提案資料を用いて契約を獲得していたものの、そのノウハウを共有しなかったため、他メンバーの営業力が伸びず、全社的な売上が頭打ちになったケースがあります。

このような状態では、新人教育や業務移管が進まず、仕組みとして業務が定着しません。結果として、事業拡大やM&Aなどの成長戦略にも対応しきれず、担当者個人の能力が組織の成長限界そのものとなります。

属人化解消の手段として注目されるBPO

属人化を解消するには、業務の標準化と再現性の確保が欠かせません。その手段として近年注目されているのが、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の活用です。「BPOは定型業務しか委託できない」と思われがちですが、実際にはその範囲は多岐にわたります。たとえば、SNS運用やキャンペーン施策の立案、目標設定の補助、メンタルヘルス対応、さらには設備の清掃や点検・修理といった現場寄りの業務まで、属人化しやすい領域でもBPO化が進んでいます。

これらの業務は、外部の専門知見を取り入れて再設計・マニュアル化することで、属人性を排除しつつ再現性や安定性を高められます。また、定型業務に限らず非定型業務も適切に切り出して委託すれば、社内リソースの最適な配置が可能となり、生産性の向上や持続可能な組織運営にもつながります。

企業・自治体の導入実績が示すBPO導入の効果

2024年に経営層・管理職1,268名を対象に実施されたパーソルビジネスプロセスデザイン株式会社の調査(※1)では、既にBPOを導入している中堅企業(従業員300~999名)のうち、約9割が「経営効率が向上した」と感じており、さらに大多数が「今後も拡大または維持したい」と回答しています。

中小企業(従業員300名未満)においても、導入企業では「業務負担が軽減された」「コストが削減された」といった効果が報告されています。

他にも同社が2025年に実施した自治体向け調査(※2)では、86団体のうち58.1%がBPOを導入済みと回答し、そのうち66%が「業務効率化」、58%が「職員の負荷軽減」を実感しているとしています。

これらの調査結果から、BPO活用は属人化を解消するだけではなく、業務の可視化・標準化・再構築を通じて、コスト削減や品質向上、人的リソースの最適配置、そして組織全体のレジリエンス強化にも寄与する点が明確です。

「属人化解消」や「DX推進」「業務設計と標準化」など、自社の目的に応じてBPOパートナーを選ぶことが成功の鍵となるでしょう。

(※1)PR TIMES|BPOに関する実態調査 第2弾 企業規模別編

(※2)PR TIMES|< 自治体のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)に関する実態調査 >

まとめ

属人化は、放置するほど組織に深く根付き、後の対応が難しくなります。だからこそ、早い段階で業務を可視化し、BPOの活用によって業務を再構築することが、企業の持続的な成長と変化への対応力を高める鍵となります。人に依存する体制から、仕組みによって支えられる組織へと移行していきましょう。

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