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BPOで拓く地方創生:香川県・高松市の企業誘致戦略と事例

近年、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)企業が地方に拠点を移す動きが加速しています。その背景には、都市部の人件費や賃料の高騰、働き方改革の進展、さらには地方創生への社会的関心の高まりなどが挙げられます。

本記事では、BPO企業誘致の成功例として、香川県高松市の戦略と成果を紹介します。また、BPO企業の地方移転が地域経済にもたらすメリットや、企業と地域の連携についても取り上げます。

地方創生とBPO企業の関係

香川県 デジタル田園都市100計画 令和6年度 香川県企業誘致条例に基づく助成金事業 およそ22億2877万円 情報通信関連産業育成・誘致事業 およそ3億1182万円 イノベーション推進事業 およそ2522万円 スタートアップ支援強化事業 およそ6382万円 その他、大規模データセンターに対する新たな助成制度の創設など etc...

人口減少や経済の停滞が進む地方自治体では、持続可能な地域社会を築くために「地方創生」に取り組んでいます。地方創生では、雇用の創出、若者の定住促進、地域産業の活性化などを目指してさまざまな施策が実施されています。なかでも企業誘致は、新たな産業の創出と雇用確保の有効な手段として注目されています。

特に注目されているのが、企業のコスト削減や業務効率化のニーズを背景に成長を続けるBPO産業です。

BPO拠点の地方移転は、地方に新たな雇用を創出し、経済を活性化させるだけでなく、都市部に集中していた業務を地方に分散することで、災害リスクの軽減やオフィスコストの削減にもつながります。また、リモートワークとの相性も良いため、地方での業務展開がしやすく、テレワークの普及や多様な働き方の実現にも寄与します。

今回はBPO企業の誘致に成功している香川県高松市をモデルケースとして取り上げ、その戦略と成果、株式会社BODの事例を中心に考察します。

香川県・高松市の企業誘致戦略:BPOに着目した理由

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香川県は「せとうち企業誘致100プラン」を策定し、今後5年から10年先を見据えた戦略的な企業誘致を進めています。同プランでは、誘致する企業に対して、オフィス用地の確保や人材確保支援、独自の助成金や税制優遇等を行なっています。

さらに県庁所在地である高松市は、コンパクトシティとしての利便性を活かし、特に若年層に魅力的な情報通信関連企業の誘致に力を入れています。高松市はBPO企業に対して、オフィス賃料補助金や雇用奨励金など、多様な誘致施策を行なっています。

BPO企業の地方進出により、企業側はコストを抑えつつ安定した労働力を確保でき、自治体側も地域活性化が進むというWin-Winの関係が築けます。

株式会社BODの高松進出事例

株式会社BOD(本社:東京都豊島区)は、事務代行、人事労務、経理、システム開発、物流、コールセンターなど、多岐にわたるバックオフィス業務を全国の顧客に提供するBPO企業です。

同社は、香川県高松市にある既存のBPOセンターを拡充し、同センター内に2024年11月1日に「インフラBPOプロフェッショナルセンター」を新たに開設しました。同センターは、電力や通信などの社会基盤を担う業界のバックヤード事務を専門に請け負う戦略的中核事務センターとして位置づけられています。これに伴い、2024年11月19日には香川県および高松市と立地協定を締結しました。

既存拠点と合わせて数年以内に従業員数を60名から100名にまで拡大する計画で、地元の雇用創出や若年層の雇用の受け皿になることが期待されています。

同社が高松市への進出を決めた理由として、同市の企業誘致施策の充実やコンパクトシティとしての利便性などが挙げられます。また、同社が高松営業所で勤務する従業員に対して実施したアンケート調査では、災害リスクの低さや治安の良さ、街並みの美しさなどの住みやすさが高く評価されています。これらの要因が、首都圏一極集中からの分散を目指す企業にとって、事業継続計画(BCP)の観点からも安心して事業運営できる地域としての魅力を高めています。

BPOが地域経済にもたらすメリット 

BPOは、地域経済に多岐にわたるメリットをもたらします。

雇用が創出される

最大のメリットは雇用の創出です。BPO企業に多いコールセンターや事務処理センターなどの業務では、多くの人材を必要とするため、地域の若年層や主婦、シニア層など幅広い層の雇用を生み出します。

雇用当初は契約社員やアルバイトでも、スキルや勤務態度によって正社員登用されるケースが多く、管理職やトレーナーなど、地域内でのキャリアアップも可能になります。

さらに、雇用に関連する地域の人材紹介会社や人材派遣会社にもプラスの影響を与えます。新たな雇用の創出によって、地方創生の核である地域全体の所得向上と、若年層の地元定着も期待されます。

オフィスが必要になる

BPOの進出はオフィス需要を通じて、不動産や建設、街のにぎわいといった面で地域経済にプラスの影響を与えます。

オフィスの新設や改装では、建設業者や内装業者、設備業者への仕事が発生します。BPO企業の中長期契約での入居は、地方都市に多い空きテナントや空きビルをリノベーションして活用も可能です。地域資源を有効活用することは、都市景観や防犯面でもメリットがあります。

IT製品の需要が高まる

BPOの誘致は、IT製品の需要を生み出し、地域全体のデジタル化を進め、IT関連産業にも好循環をもたらします。BPO業務はPCやモニター、ヘッドセット、サーバーなどのIT機器が必須となる場合が多く、新規拠点立ち上げ時には、IT機器の大量調達が発生します。その際、地元のIT販売店やリース業者への発注が期待されます。

また、個人情報を扱う業務では、クラウドシステムやセキュリティ機器(UTM等)も重要になります。これにより、地域内でのITソリューション分野へのニーズが多様化・高度化します。

企業と地域はどのように連携できるか?

企業誘致による地域活性化を持続的なものとするには、企業と地域の連携が不可欠です。進出企業は、業務の一部を地元企業と分担したり、地域資源を活用した共同プロジェクトを運営したりすることで、地域経済を活性化させる役割が期待されています。

さらに、地元の高校や大学と連携し、人材育成プログラムの共同開発やインターンシップの実施、職業教育のサポートなど、若年層の地元定着を促し、地域の労働力の質を向上させることもできます。

BPO企業にとって地方移転は、人件費やオフィスコストの削減に加え、安定した人材の確保や災害リスクの分散といったメリットがあります。これらのメリットを実現するためには、地域と良好な関係構築が不可欠です。企業が一方的に進出するのではなく、地域と共に歩む姿勢が求められます。具体的には、地域イベントへの積極的な参加、地元採用の推進、柔軟な働き方の導入などを通じて、企業と地域社会との関係を深められます。

自治体側も、企業誘致を一時的な雇用創出で終わらせない工夫が必要です。企業との長期的かつ対等なパートナーシップを築くことが、持続的な地域活性化の鍵となります。

まとめ|BPOが地方を活性化する

BPO企業の地方進出が進む中、香川県や高松市は積極的な誘致戦略でBPO企業の誘致に成功しています。これらの取り組みは、雇用創出や地域経済の活性化に寄与し、持続可能な地域社会の形成に向けた好事例となっています。

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