
専門知識や最新技術を取り入れたBPOは、地方企業や自治体のDXを推進させます。デジタル化の波が広がる一方で、地方では人材不足やレガシーシステムの障壁など、多くの課題を抱えています。
本記事では、地方におけるDXの現状と課題を掘り下げ、DXとBPOの関係性、地方DXとBPOの実践事例についてご紹介します。
地方企業・自治体のDX推進の状況と課題
地方企業・自治体のDX推進の状況と課題について解説します。地方企業・自治体のDX推進の状況と課題について解説します。
大都市圏に比べDXの意識が低く、遅れている
デジタル庁が公表した「市区町村毎のDX進捗状況_都道府県比較_全体方針策定」の進捗では、大都市圏の50%超に対し、地方では20〜30%台に留まっています(※2024年7月12日時点)。
背景の一つとして、地方では中小企業の割合が高いことが挙げられます。中小企業は、大企業と比べてリソースが限られているだけでなく、DXに対する意識も低い傾向があります。
特に、従業員規模が20人以下の企業では、「何から始めてよいかわからない」「具体的な効果や成果が見えない」といった課題が多く、DXの本質的な意義への理解が不足していることがハードルの高さを感じさせる要因とされています。
参考: 中小企業庁|都道府県・大都市別企業数、常用雇用者数、従業者総数(民営、非一次産業、2021年) 独立行政法人 中小企業基盤整備機構|中小企業のDX推進に関する調査(2023年)
専門知識を有する人材、企業が不足している
経済産業省が公表した「DX支援ガイダンス」によると、多くの中小企業がDXに取り組む際、「IT・DX推進に関わる人材が足りない」「予算の確保が難しい」といった課題を挙げています。
特に中堅・中小企業では、社内リソースのみでの対応が難しく、外部からの支援を求める声が多く聞かれます。しかし、地域密着型のベンダーであっても、高度なデジタル専門知識を持つ企業は限られており、期待する水準の支援を受けられないケースが少なくありません。
このような人材や企業の不足は、地方におけるDX推進の障壁となっています。
既存業務システムの移行が難しい
同ガイダンスでは、DX推進において「レガシーシステム(※)がいまだ足かせとなっている企業」や、「企業変革の入り口で足踏みする企業」が多いと指摘されています。
特に中小企業では、「DXに全く着手していない」もしくは「一部業務のデジタル化に留まっている」企業が半数以上を占めています。
長年使用されてきたシステムは、業務に深く根付いているため、移行には多大なコストやリスクが伴うことが懸念されます。このため、新しいDX施策を導入しようとしても、既存システムとの互換性や操作性の違いが問題となり、進展を妨げるケースが少なくありません。こうした既存システムの移行問題は、DX推進の主要な課題の一つです。
(※)レガシーシステム:過去の技術や仕組みで構築されたシステムのこと
DXにBPOが不可欠な3つの理由と両者の関係性
DXにBPOが不可欠な理由は以下の3つです。
DXの推進には専門知識や技術が必要なため
DXの推進には専門知識や技術が必要ですが、多くの企業ではこれらを十分に備えていないため、進捗が遅れることがあります。この課題を解決するためにBPOが選ばれています。
BPOで外部人材を活用することでDXの推進力が高められるため
BPOを活用することで、外部の専門家や最新技術を取り入れ、DXの推進力を高められます。また、社内開発に比べて、長期的なコスト削減に貢献します。
BPOとDXを組み合わせることで、持続的な成長が期待できるため
BPOとDXは補完関係にあり、特にリソースが限られる地方企業においては、両者を効果的に組み合わせることで、持続可能な成長や地域活性化の実現が期待できます。DXの成功には、地方に理解のあるBPOの活用が重要な役割を果たすのです。
地方DX+BPOの実践事例3選
地方DX推進とBPOを実践した事例についてご紹介します。
事例1:株式会社常陽銀行の事例(茨城県水戸市)
株式会社常陽銀行は、地域企業の成長支援と組織力強化を目的に、2020年6月にコンサルティング営業部を発足しました。ファイナンス、アドバイザリー、公務室といったグループで構成されており、そのうちのリサーチ&コンサルティング「ITデジタル推進チーム」が、地域企業のデジタル化を支援する役割を担っています。
具体的には、紙中心の業務プロセスをデジタル化し、情報共有を推進することで働き方改革を実現しました。また、経営者と現場の間のギャップを解消するため、課題を深掘りし、現場に適した解決策を提案することを重視しています。さらに、外部支援の活用や、現場の協力体制の整備といったポイントを押さえながら、中長期的なDX促進を伴走型で支援しています。
事例2:株式会社ふくおかフィナンシャルグループ(福岡県福岡市)
株式会社ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)は、ITコーディネータの資格を取得したデジタル化支援メンバーを中心に、中小企業のデジタル化を支援しています。
古賀製茶本舗の支援事例では、基幹システムベンダー廃業をきっかけに、販売管理システムのクラウド化を推進。具体的には、情報のデジタル化、業務プロセスの見直し、ビジネスモデルの再構築という3段階に分けてDX戦略を策定し、クラウド移行を成功させました。また、認定経営革新等支援機関の認定を取得し、信頼性と実効性を高めました。
さらに、潜在的なIT人材を"応援隊"として集める取り組みやIT導入補助金の申請支援を通じて、リソースが不足しがちな中小企業に対し、人材や資金面でのサポートを実施することで、変革の実現に必要な基盤を整えました。
事例3:Japan Farm to Folk Communityの事例(静岡銀行、DXHR株式会社など)
Japan Farm to Folk Communityは、食・農業分野のDX推進を目的に設立された地域DX推進コミュニティです。一般社団法人Tokyo Food Instituteが事務局を務め、地域企業とソリューションを有するITベンダーをマッチングさせるプラットフォームを提供しています。また、地域DXセミナーを定期的に開催し、参加者に向けた実践的な知識の共有やベストプラクティスの創出を目指しています。
静岡県内の農園支援の一環として、地域の茶農家が直面する受注管理やECサイト改善などの課題を解決するため、エリア全体をカバーするキュレーションサイトを構築。サイトの導入により、個別の農家では対応が難しかったオンライン販売の効率化や、地域ブランド力の向上に繋がりました。
この事例は、食・農業分野におけるDXの推進が地域経済や社会に持続可能な成長をもたらす可能性を示しており、他地域への展開も期待されています。
BPO×DXを成功させるポイント
BPOとDXを成功させるには、BPO導入とDX促進の目的を明確化し、達成したいゴールを設定することが重要です。どこをDX化するべきかといったゴール設定を通じて、業務プロセスの改善や価値創出の方向性を具体化できます。
また、連携するパートナーの選定も慎重に行う必要があります。過去の実績や専門性、取引先ネットワークを総合的に評価し、特にデジタル技術に強みを持つパートナーを選ぶことで、効率的なDX推進が可能です。さらに、成功事例や専門的な知見を基に信頼性を確認することで、より確実な成果を期待できます。
上記の要点を押さえ、BPOとDXのシナジーを最大化させていきましょう。
まとめ|外部パートナーと連携してDXを推進させる
地方のDX推進はさまざまな問題があるものの、障壁を乗り越えることで、地方に特化した新たな価値創造や地域活性化の道が開かれます。
専門知識を保有する外部パートナーと連携し、持続可能なDXを実現させましょう。