
BPaaS(Business Process as a Service:ビーパース)は、クラウド技術とアウトソーシングを組み合わせた業務プロセスサービスです。業務効率化やコスト削減に直結するソリューションとして、多くの企業が導入を進めています。
本記事では、BPaaSの基礎知識からメリット・デメリット、導入事例までを詳しく解説します。ビジネスの成長を加速させるヒントとして、ぜひご覧ください。
BPaaSとは

BPaaS (Business Process as a Service)は、SaaSなどのクラウドサービスを活用して「特定の業務プロセスそのもの」をサービスにすることを指します。この言葉は、世界最大規模のICT(情報通信技術)リサーチ&アドバイザリ企業であるガートナー社が提唱したものです。
SDKIの調査および分析によると、世界のBPaaS市場は2023年に約9兆3,450億円に達しており、2036年までには約33兆1,950億円の価値に達すると予測されています。
日本での市場をみてみると、Data Bridge Market Researchの分析でも、2030年までに日本のBPaaS市場は1兆505億7,000万円に達すると予想されています。今後もBPaaSは成長が見込まれる分野です。
クラウド技術とプロセス最適化を組み合わせた次世代の企業支援ソリューションとして、BPaaSはますます注目を集めています。
※1ドル150円で算出
BPaaSとBPOの違い
BPaaSとBPOはどちらも「ビジネスプロセスサービス」に分類されますが、その手法には明確な違いがあります。BPOは特定の業務を外部企業に委託し、主に人的リソース(労働力)を活用して業務を遂行します。
一方、BPaaSはクラウド技術を活用し、業務プロセス全体をオンラインで提供するサービスです。複数の利用者が同時に利用可能で、AIやRPAといった最新のIT技術を導入しやすい点が特長です。国内では、大手コンサルティングファーム、サイボウズやfreee、Kubell、トランス・コスモスなどが参入しています。
クラウドの普及やITツールの進化に伴って、BPO企業の多くはSaaSを活用しているため、両者の境界は曖昧になってきています。
BPaaSのメリット
BPaaSのメリットは、以下の3つです。
従来のBPOやSaaS導入よりも業務効率が加速する
BPaaSはクラウド技術を活用してアウトソースできるため、従来のBPOやSaaSに比べて業務効率が加速します。
発注企業の従業員は煩雑な作業から解放され、重要なタスクや意思決定に集中できる環境が整います。また、業務プロセスが標準化されることにより、仕事の質を均一化させる効果もあります。
データをリアルタイムで共有できる
クラウド上でデータを一元管理することで、複数の部門がリアルタイムに情報を共有可能です。
さらに、従来のBPOではベンダー側に留まりがちだったノウハウも可視化され、データ状況を迅速に把握できるようになります。その結果、業務フロー全体の透明性と部門間の連携が向上します。
コスト削減の幅が広がる
BPaaS導入により、クラウドサービスの利用料やインフラコストが不要となります。オンボーディングの工数削減や人件費のカットなど、コスト削減の幅が広がる点も魅力的です。
また、需要に応じてスケールアップやスケールダウンが可能で、業務量に合わせた柔軟な費用管理を実現します。
BPaaSのデメリット
BPaaSには、以下のようなデメリットもあります。
外部ベンダーに依存するリスクがある
BPaaSを利用する場合、外部ベンダーに依存するリスクがあります。システム障害や運営停止が発生すると、自社の業務が停止する恐れが高まります。
また契約終了時には、データ移行や引き継ぎが必要となり、コストや時間の負担増加も懸念されます。信頼性の高いベンダーを選定し、バックアップ体制を整備しておきましょう。
データ漏洩や不正アクセスの恐れがある
クラウド上でデータを管理するBPaaSは、セキュリティリスクが伴います。特に機密性の高いデータを扱う場合は注意が必要です。ベンダー側のセキュリティ対策が不十分だと、データ漏洩や不正アクセスの被害を受ける可能性があります。
利用前に委託先のセキュリティポリシーを確認し、必要に応じて追加の安全策を立てていきましょう。
カスタマイズに制限がある
BPaaSは標準的な業務プロセスを基盤に設計されているため、カスタマイズが難しい場合があります。
そのため、柔軟なカスタマイズが可能なベンダーを選定するか、標準機能と特殊要件を組み合わせた運用方法を検討する必要があります。導入前に自社の要件を明確化し、最適なサービスを選ぶことが重要です。
BPaaSの導入事例
BPaaSの導入事例として、以下の2つをご紹介します。
事例1:日東電工株式会社
日東電工株式会社(Nitto)は経営資本を中核事業に集中させるため、日本IBM、SAPジャパン、コンカーと連携し、経理・購買システムを刷新しました。調達・購買クラウドや経費管理クラウドを導入し、業務の簡素化・標準化を進めています。
日本IBMは、構想策定からシステム構築までを主導し、迅速な業務改革を支援しました。このプロセス改革により、間接業務の効率化や支出削減を達成し、日東電工は「Innovation for Customers」のブランドスローガンのもと、グローバル成長を加速させる基盤を強化しています。
事例2:ワイムシェアリング株式会社
ワイムシェアリング株式会社は、Kubell社提供の「Chatwork アシスタント」を活用し、ノンコア業務を切り出すことで人手不足の課題を解決し、事業拡大を加速させました。
具体的には、入会後の契約促進メールや問い合わせ対応、請求業務、資料作成補助などの定型業務を委託しました。その結果、業務が標準化され、効率的な運用が可能となりました。
業務効率化によって生まれた余力を新店舗展開やサービス改善に活用した結果、事業拡大に成功しています。さらに、業務負担の軽減により、従業員がコア業務に集中できる環境が整いました。
BPaaS導入時の注意点
BPaaSを導入する際は、以下の点に注意しましょう。
データセキュリティ対策を徹底する
BPaaSはクラウド上でデータを管理するため、データ漏洩や不正アクセスのリスクが高まります。
対策として、ベンダーがISO27001やSOC2といった国際基準に準拠しているかを確認することが重要です。また、データの送受信や保存時に暗号化が施されていることをチェックしておきましょう。
法規制違反を防ぐための体制を整える
データ保護法や業務関連の規制を遵守しないと、罰則や信用失墜を招くリスクがあります。 特に海外ベンダーを利用する際は、国ごとに異なる規制への理解が必要です。
国内外のデータ保護法(例:GDPRや個人情報保護法)への準拠状況や、クラウドサーバーの所在地が適切かを確認し、法規制違反を防ぐための体制を整備しましょう。
まとめ|BPaaSは、SaaSとBPO両方の強みを発揮する
SaaSとBPOの良さを取り入れたBPaaSは、業務の効率化やコスト削減に貢献します。
セキュリティやリスク管理に十分配慮し、BPaaS活用を検討していきましょう。
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POINT -
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