業務効率化 過労死防止法制定から10年、BPOがつくる働きやすい環境

BPOデジタル化働き方改革業務効率化過労死

 
過労死防止法制定から10年、BPOがつくる働きやすい環境

過労死防止法が制定されてから10年が経過しました。しかし、働き方改革が進む一方で、依然として多くの企業が過重労働や労働環境の改善に課題を抱えています。

本記事では、過労死防止法の現状を踏まえつつ、働きやすい環境を実現するためにBPOが果たす役割と、その具体的な効果について解説します。

※本記事で出てくる統計データは、厚生労働省の以下のレポートを参照しています。

令和6年版過労死等防止対策白書

過労死防止法は機能しているのか?就労の実態

2014年に施行された「過労死等防止対策推進法」は、仕事と生活の調和、健康で働き続ける社会の実現を目的としています。

独立行政法人労働政策研究・研修機構によると、一人当たりの年間総労働時間は2022年で1,598時間とされており、2012年の1,745時間を境に年々減少傾向にあります。

しかし、その一方で、過労死に関連する労災請求件数は増加傾向にあり、課題は依然として残っています。なぜ一人当たりの労働時間は減少しているにも関わらず、労災や過労死は増えているのでしょうか?

厚生労働省のデータによると、2023年度における過労死関連の労災請求件数は1,023件となり、前年度より220件増加しました。

また、労災認定された事案における1か月当たりの時間外労働時間の割合は以下の通りです。

  • 80時間以上100時間未満:39.5%
  • 120時間以上:27.1%
  • 100時間以上120時間未満:25.8%
  • 80時間未満:7.6%

過労死の原因は、大きく2つの種類に分けられます。一つは過重労働による『脳・心疾患系』の障害で、脳梗塞や心筋梗塞が含まれます。もう一つは、強い心理的負荷による『精神系』の障害です。どちらの障害についても、2023年度の労災請求件数は過去最高を記録しました。

出典: 独立行政法人労働政策研究・研修機構|国際労働比較2022 厚生労働省|過労死等防止対策

制御できない、下請けへのしわ寄せ行為

大企業では、政府の規制強化や企業内での労働環境整備により、働き方改革が進んでいます。しかし、下請け企業は事業に関する契約において、さまざまな課題に直面しています。厚生労働省の調査では、以下の状況に対し「よくある」「時々ある」と回答した割合は次の通りです。

  • 十分な利益を得るのが困難な契約金額:30.6%
  • 納期に困難のある契約内容:25.7%
  • 人員確保に困難のある契約内容:23.6%
  • 自社技術では難しい業務内容:16.5%

これらのデータから、下請け企業は不十分な利益配当や納期の厳しさ、人手不足など、さまざまな課題に直面していることがわかります。特に、限られた人員で業務を処理する必要があるため、過剰な業務負担を抱えざるを得ないのが現状です。

大企業で働き方改革が進む一方、その影響は下請け企業に業務のしわ寄せとして現れています。例えば、短納期の要求や過大な業務量が、下請け企業の負担を増大させています。

このような課題は下請け企業に限らず、フリーランスといった他の働き方にも影響を及ぼしていると考えられます。

軽視されがちなフリーランス・業務委託の就業実態

内閣官房によれば、日本のフリーランス人口は約460万人となっており、働き方の多様化に伴い増加傾向にあります。しかし、フリーランスの働き方には多くの課題が存在しています。

厚生労働省によると、フリーランスの「週の平均就業時間は60時間超え(月80時間を超える時間外労働に相当)」だとわかっています。

さらに内閣官房が行った調査では、業務委託者の約40%が「発注の時点で、報酬や業務の内容などが明示されなかった」と回答。不透明な契約条件や一方的な契約解除といった問題が浮き彫りとなっています。

出典: 内閣府|日本経済2021-2022「第3章 成長と分配の好循環実現に向けた家計部門の課題(第1節)」 厚生労働省|危険有害作業以外の個人事業者等対策(過重労働、メンタルヘルス、健康管理等) 内閣官房日本経済再生総合事務局|フリーランス実態調査結果

過重労働の3つの大きな要因過重労働の3つの大きな要因

現代の職場における過重労働の要因について、ここでは3つ取り上げてご紹介します。

デジタル化の遅れ

まず注目すべきは、デジタル化の遅れです。多くの企業でICT(情報通信技術)の活用が進んでおらず、業務の効率化が十分に図られていません。

厚生労働省の調査では、所定外労働の理由として「業務量が多い」が最も多く、ICTの未整備も上位に挙げられています。古いシステムや紙ベースの作業に依存し続けることで、業務効率が大幅に低下している現状が示されています。

人材が不足している

人材不足も、過重労働を引き起こす要因の一つです。所定外労働の理由では「人材不足」が2位を占めており、特に中小企業では顕著です。適切な人数が確保できないことで、一人ひとりに過剰な業務負担がかかり、労働時間の延長が常態化しています。

業務が平準化されていない

業務が平準化されていないことも、過重労働の原因として挙げられます。業務フローやマニュアルが整備されていない企業では、例えば契約書作成や顧客管理などの業務が特定の担当者に集中する傾向があります。

各業界で働きやすい環境をつくるために、BPOが実現できること

企業は「労働時間の削減」と「売上の向上」を両立させることが不可欠です。しかし、現状では業務の複雑化や非効率な作業が、過重労働の一因となっています。こうした課題の解決に有効なのがBPOです。

単にITツールや勤怠管理システムを導入するだけでは、根本的な解決には至りません。BPOを導入して業務の最適化を進めることで、外部の専門性を活用しながら、働きやすい環境づくりと売上向上の両立が期待できます。以下は、業界ごとの具体例です。

1. 運輸業界

運輸業界では、ドライバー不足や配送ニーズの多様化が進み、業務負担が増加しています。そこでBPOを活用することで、以下の業務の効率化が期待できます。

  • 配送スケジュールの作成:配送ルートや時間指定管理を効率化し、業務負担を軽減
  • 最適ルートの設定:渋滞予測や燃費効率を考慮し、配送時間とコストを削減
  • 運行記録の管理:運転時間や距離の記録業務を外部に委託し、手間を削減
  • 車両整備記録の整理:整備履歴や点検スケジュールを一元管理

2. 建設業界

建設業界では、慢性的な人材不足と現場の安全対策が大きな課題です。BPOを導入することで、以下の業務を効率化できます。

  • 現場の安全管理システム運用:専門企業が監視体制を整え、事故リスクを軽減
  • CAD設計や図面作成:設計業務の一部を外注し、担当者の負担を軽減
  • 工事進捗管理の報告:進捗確認や報告書作成を外部に任せ、現場管理の効率を向上

3. 物流業界

物流業界では、EC市場の拡大に伴い、倉庫作業や在庫管理の業務量が急増しています。BPOの導入により、以下の業務最適化が期待できます。

  • 倉庫管理・在庫管理:専門企業に委託し、最適な保管方法や在庫確認を効率化
  • ピッキング作業の効率化:自動化システムやAIを活用し、作業時間とミスを削減
  • 顧客対応業務:物流に関する問い合わせやクレーム対応をコールセンターに外部委託

4. IT業界

IT業界では、開発人材の不足と業務の多様化が課題となっています。特にエンジニアが保守業務やサポート対応に追われ、本来の開発業務に集中できないケースが多く見られます。BPOの活用により、以下の業務効率化が期待できます。

  • ソフトウェアテスト・保守:動作テストや定期メンテナンスを外部に委託し、エンジニアの負担を軽減
  • ITサポートデスクの運用:ユーザーからの問い合わせやトラブル対応を外注し、効率的に処理
  • データ管理・バックアップ業務:日常的なデータ処理やセキュリティ強化を専門企業に任せる

まとめ|BPOは働きやすい環境づくりをサポートする

BPOは、過重労働の解消や業務効率化を通じて、企業の働きやすい環境づくりを支援します。業務改革や働き方改革を目指す企業にとって、BPOの導入は重要な一手となるでしょう。

PAGE TOP