業務効率化 損害保険会社におけるBPO導入ニーズと課題、導入事例について解説

BPO導入事例損害保険

 
損害保険会社におけるBPO導入ニーズと課題、導入事例について解説

構造的な少子高齢化の問題によって人材不足に直面する多くの企業は、働き方改革などによって自社リソースを有効活用するよう求められています。

その解決策として注目されているのが、自社業務の一部を外部に委託するBPO(Business Process Outsourcing)への取り組みです。

BPOは国内外を問わず、多種多様な業界で活用されていますが、この記事では特に損害保険会社におけるBPOについて、詳しく解説します。

損害保険会社が抱える課題

少子高齢化に伴う人材不足や社会環境の変化、人々のライフワークバランスなどに対応するため、損害保険会社は多くの課題を抱えています。

BPOの活用により、デジタル・IT化や、業務設計の見直しと業務の振り分けによる外部委託、また人材リソースの効率化が進み、損害保険会社が直面する様々な課題の解決が期待できます。

現在損害保険会社が抱える主な課題は次のとおりです。

  • 日々変化する自然・人的災害に応じたBCP対策(Business Continuity Plan:事業継続計画)の策定
  • 従来の「紙」ベースによる処理業務のペーパーレス化と運用改善
  • 配置転換など人材リソースの見直しによる業務の生産性向上と事業費削減
  • 業務の属人化やブラックボックス業務の解消
  • 専門性の高い業務の見える化・標準化や、外部委託による効率化推進
  • CX(Customer Experience:顧客経験価値)の向上へ向けたIT・デジタル技術の活用

損害保険会社に期待されるBPO分野

損害保険会社が抱える課題を解決するために導入が期待される主なBPOの分野や項目は次のとおりです。

主なBPO分野

  • 各種契約事務(等級訂正・計上業務など)のサポート
  • カスタマーサポート業務・CX向上関連業務
  • 等級訂正など、専門性の高い業務
  • 各種機能を海外や地方に分散することによるコストダウン
  • FAQ改善など、チャネル最適化
  • 定型作業の業務効率化

主なBPO対象項目

  • 事故受付業務(24時間365日対応)
  • 人材確保が困難な夜間・休日における業務への対応
  • レンタカー手配、指定工場への入庫などの初期対応
  • 請求書の電子化
  • 保険金の支払い手続きや査定業務
  • 保険金支払い書類のペーパーレス業務化

損害保険会社特有の様々な業務分野・項目に、BPOを活用することができます。

損害保険会社におけるBPO導入事例

損害保険会社におけるBPO導入事例について取り上げて解説します。

事例1:保険金請求書類のペーパーレス化とBCP拠点でワンストップ化

  1. 課題

    • 主力の火災保険とがん保険は書類の種類が多く、内容判別が難しい
    • 全国のサービスセンターの担当者が書類の発送や受領を手作業で担当
    • 手作業による各工程作業により、大規模災害の際に著しい業務増が発生
  2. BPOの取り組み内容

    • ペーパーレス化を実施し、ネットで保険契約を完結できるよう改善
    • 契約管理側のペーパーレス化を実現し、保険金請求書類も同様に展開
    • BPO基幹システムを新規開発
  3. 改善点

    • 現場のサービスセンターから「事務処理が楽になった」との評価を獲得
    • お客様対応に注力できる時間が増大

損害保険株式会社A社では、BPO活用によって各種保険金の請求に関するバックオフィス業務のペーパーレス化を導入し、大きな効果を上げています。

また、BCP対策として自社内製で実施していた事故受付センターやサービスセンターを外部BPO事業者へ委託することで、ワンストップ化を推進しています。

BPO活用により、従来と比べて業務が大幅に効率化しました。

事例2:自動車保険の事務プロセスを外部委託して効率化

  1. 課題

    • 事務領域における属人化と、システムが不十分なことによる業務のマニュアル化・見える化に問題点
    • 事業規模に合わせた事務業務の拡大の限界
  2. BPOの取り組み内容

    • 業務の繁閑差に合わせた柔軟な人事配置による、業務量に合わせた柔軟に対応ができる取り組み
    • BPO対象範囲を段階的に拡大
  3. 改善点

    • 生産性が向上
    • 生産性向上に伴い、全国の各センタースタッフの定着率も大きく改善

損害保険会社B社では、自動車保険に関する受付など各種業務を、BPOによる外部委託によって業界初のインターネット・電話での対応とし、ダイレクト自動車保険の市場でトップシェアを維持しています。

従来自社行っていた各種業務をBPO化することで、社内だけで運営していた時と比較すると生産性が向上し、ミス率も減少しました。

事例3:保険金支払いのリードタイム短縮と運営コストの低減

  1. 課題

    • 保険契約数の増加に伴い、紙による保険金請求書類処理の工数がひっ迫
    • 首都圏地域での業務展開による、オペレーションコストの高騰
    • 保険金支払いに際してリードタイムが長期化している
  2. BPOの取り組み内容

    • 契約数の増加に対応できるセンターの拡張性を確保
    • センターを地方化し、コスト低減を実施
    • 保険金請求書類を電子化し、ノウハウを共有
  3. 改善点

    • 業務の地方化とデジタル化によるコスト最適化
    • 書類処理による工数ひっ迫を緩和
    • BPO査定担当者がコア業務に集中できる環境を実現
    • お客様への支払いリードタイムが短縮され、生産性が向上

損害保険会社C社では、保険金契約数の増加に伴って処理工数の増大が大きな課題となっていました。

こうした状況下、BPO活用による業務の地方拠点化やIT・デジタル化の推進により、業務の効率化と運営コスト削減を実現しました。

保険契約者に対する保険金支払いに関するリードタイムが短縮され、生産性の向上を達成しています。

損害保険会社におけるBPO導入のポイント

損害保険会社がBPOを導入することのポイントについて解説します。

保険金支払いにおける業務効率化

損害保険会社にとって、保険金支払い業務をいかに効率化させ、保険金支払いのリードタイムを短縮するかが顧客満足度に直結する大きな課題です。

そのためには、ペーパーレス化と、サービスセンター業務の集約・効率化が大きなポイントとなります。

スピードと正確性

損害保険会社における各種業務では、スピードと正確性が最も重要なテーマとなります。

損害サービスを効率化する際には、お客様より送付された書類のデータ化や、事案対応や損害調査に集中できる環境を整備することが重要なポイントとなります。

外部ノウハウの活用

損害保険業務を迅速・正確に実行するには、外部のBPO事業者が有する豊富な経験・ノウハウと、これを活かした最適な業務フローを確立することが重要です。

例えば、高い専門性を持つBPO事業者のコンサルタントをプロジェクトに導入することで費用対効果が高くなる可能性があるため、自社にとって大きなメリットが期待できます。

外部ノウハウの活用により、適正で効率的な業務運営が可能となります。

まとめ

損害保険会社におけるBPO導入ニーズと課題、導入事例や導入時のポイントについて詳しく解説しました。

各種処理業務が非常に煩雑で、かつ迅速・正確な処理が求められる損害保険会社にとって、BPOの活用は非常に効果的です。

この記事を読んで、BPOの活用を検討している事業者は是非お役立てください。

TOP