スタートアップ企業にBPO活用をおすすめする理由
スタートアップ企業の多くは人手不足を課題と感じており、社員一人当たりの業務負担が大きく、社員がコア業務に集中しにくい状況にあります。実際に、三井住友信託銀行が実施した「スタートアップサーベイ2023(※)」によると、スタートアップ企業の多くが目下の経営課題として「人材採用・人事制度構築」「販路開拓・拡大」を挙げています。
社員の業務負荷が高まり続けると、サービスの質の低下や社員の離職などに繋がり、事業成長が停滞していきます。BPOを活用すると、外部委託によって専門知識を保有する人材補強が実現し、コア業務への集中化が可能になることで、結果的に事業拡大に繋がります。
(※)KEPPLE|500社以上のスタートアップへの調査から読み解く、飛躍への道筋と経営のヒント参考:三井住友信託銀行|スタートアップサーベイ2023の調査結果(抜粋)
スタートアップ企業がBPOを活用するメリット
スタートアップ企業がBPOを活用するメリットは大きく4点あります。
事業成長の促進
BPOを導入すると、最も時間をかけたい仕事にフォーカスできるようになるため、ビジネスチャンスを逃すことなく事業成長が加速します。
BPOによって総務部や営業部を一括導入できることから、企業体制も早期に整えられる点もメリットです。
人件費の変動費化
多くのBPOは固定費ではなく、基本的に取引量に応じて料金が変化する変動費扱いとなります。柔軟に費用配分を変えられるため、事業の予測が難しいスタートアップ企業でも、安心して導入できるでしょう。
専門性の高い人材の確保
BPOの活用によって、専門性の高い人材の確保が可能です。ノウハウをもつ人材を外注化することで、業務の精度と効率化が向上します。
また、自社の社員ではないからこそ、ノウハウや実績のある担当者から、客観的な立場で助言をもらえることもあります。
バックオフィス業務の強化
事業が加速するにつれて、スタートアップ企業では、経理や人事といったバックオフィス業務の負担が増えていきます。BPO導入でノンコア業務を外注化すると、自社はコア業務に集中できます。
また、事業設立時には、適切な内部統制体制を整備し、コーポレートガバナンスを強化することが重要です。公正な判断、運営が行えるよう、バックオフィス業務の強化は早急に対応すべきでしょう。
スタートアップ企業で活用できるBPOサービスの種類
実際にどのようなBPOサービスがスタートアップ企業で活用できるのでしょうか?今回は需要の大きい5種類の分野を紹介します。
- データ入力・集計サービス
- 支援内容
- アンケート用紙などのデータ化、帳票/伝票類の会計ソフトへの入力、データの集計・整形。
- 特徴
- 煩雑なデータ処理業務を専門的に代行し、データの正確性と効率性を向上させます。スタートアップの限られたリソースをコア業務に集中させることが可能です。
- 主要なプレイヤー
- イー・ガーディアン、うるる、他
- カスタマーサポートサービス
- 支援内容
- 電話・メール・チャットによる顧客対応、問い合わせ対応、問題解決サポート。
- 特徴
- 24時間365日対応可能なサービスもあり、専門スタッフが顧客満足度を向上させます。急な対応が必要な場合にも柔軟に対応し、企業の信頼性を高めます。
- 主要なプレイヤー
- アディッシュ、HELP YOU、他
- 翻訳・ローカライズサービス
- 支援内容
- 公式Webサイト、製品マニュアル、動画テロップの多言語翻訳(英語、中国語、韓国語など)。
- 特徴
- 単なる翻訳にとどまらず、対象国の文化や宗教、方言に配慮したローカライズを行い、グローバル市場への円滑な展開をサポートします。
- 主要なプレイヤー
- Gengo、Translated、他
- 画像アノテーションサービス
- 支援内容
- AIの精度向上に必要な教師データ作成(物体検出、領域抽出、画像分類など)。
- 特徴
- 高度なAIモデルの開発に不可欠なデータを大量かつ正確に作成し、スタートアップのAI関連プロジェクトを加速させます。
- 主要なプレイヤー
- FastLabel、アッペンジャパン、他
- サイバーセキュリティサービス
- 支援内容
- Webアプリケーションやスマートフォンアプリの脆弱性診断、セキュリティコンサルティング、セキュリティ教育。
- 特徴
- スタートアップの重要なデータやシステムを保護するための総合的なセキュリティ対策を提供し、信頼性と安全性を確保します。
- 主要なプレイヤー
- イー・ガーディアン、サーバーワークス、他
スタートアップ企業がBPOを活用するデメリット
一方で、スタートアップ企業がBPOを活用するデメリットとは何でしょうか?大きく分けて4点挙げられます。
自社にノウハウが蓄積しない
BPOを導入すると、自社内でノウハウが蓄積しにくい傾向にあります。将来的に自社が業務を引き継ぎたい場合、事前に移行期間や移行に伴うコストを確認しておきましょう。
コミュニケーションミスが起こりやすい
BPO企業との業務上のコミュニケーションは、リモートでチャットやメールを利用することが多くなりました。チャット・メールでは認識やニュアンスのずれによって、業務上でミスが起きる可能性があります。
対策として、定期的なミーティングの実施や、報告や連絡といったやり取りを意識して行いましょう。
情報漏洩のリスクがある
委託先と情報共有した際、情報が漏洩する恐れがあります。そのため、以下のような点を確認しておくことが重要です。
- プライバシーマーク、ISMSの認証を受けているか。
- NDA(機密保持契約)を含む明確な契約を締結しているか。
- 情報の取り扱いに関する詳細な規定を設けているか。
- 委託先の情報管理体制を監査し、セキュリティ対策が適切に実施されているか。
- 従業員へのセキュリティ教育を定期的に実施しているか。
情報漏洩リスクを軽減するためにも、上記の点を事前にチェックしておきましょう。
業務マネジメントがしづらい
自社内の業務を外部委託することで、業務の進捗状況や問題点が把握しにくくなります。そのため、定期的な進捗状況の報告や情報共有を行い、BPO企業に任せっきりにしないことが重要です。
業務のクオリティやパフォーマンスを評価するための具体的なKPI(重要業績評価指標)を設定し、その達成状況をモニタリングするのもおすすめです。プロジェクト管理ツールを活用して、進捗状況や課題をリアルタイムで共有し、業務の透明性を高めておきましょう。
スタートアップ企業がBPO導入前に確認すべきポイント
スタートアップ企業がBPOを導入する前には、以下のポイントを確認しましょう。
- 対応業務範囲や専門性は適切か。
- スタートアップ企業の導入事例はあるのか。
- 最終的なROI(投資収益率)が見合う料金体系になっているか。
- セキュリティ対策は万全か。
BPO企業ごとに得意分野や対応範囲は異なります。依頼したい業務に対応しているか、業務の専門性は高いかなど、事前に確認しておきます。
またBPO企業の中には、大〜中規模の企業に対しては豊富な導入実績があるものの、スタートアップ企業に対しての実績が限定的な場合も少なくありません。そのため、スタートアップ企業特有の課題やニーズに対応しているかの確認が重要です。
他にも、BPOサービスの導入検討をする際には、1〜3年先を見据えた継続依頼ができるか、コスト面を確認することが重要です。
BPO導入にあたって、委託業者に顧客情報や社員情報といった重要な情報を提供する場合があります。万が一に備え、外注先のセキュリティポリシーをしっかり確認しておきましょう。
まとめ
本記事では、スタートアップ企業がBPOを活用するメリット・デメリットについて紹介しました。
スタートアップ企業がBPOを導入することで、コア業務への集中化が可能となり、事業成長の促進に繋がります。
導入前には、対応範囲や専門性、導入事例などを確認し、自社と相性の良いBPO企業を探していきましょう。
- コスト削減効果を発揮するためには、導入成果のゴールイメージと依頼業務の範囲を明確にすることが重要!