海外新興諸国におけるBPOの動向
企業が自社業務の一部をBPO化し、その対象先を海外に向けることで、国内BPOでは得られない多くのメリットが期待されます。
ここ最近、海外新興諸国におけるBPOの内容はデータ入力などの簡単な作業から、付加価値の高い業務内容へと進展しつつあり、今後海外BPO先は単なる業務委託ではなく、「戦略的パートナー」の位置づけが期待されています。
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海外BPOへの期待
元来、BPOは企業が自社のコア業務以外を外部に委託することで業務を振り分け、コア業務に集中して業務全体の効率を向上させることが大きな目的です。
製造業をはじめ、日本企業の多くは海外へ進出しており、グローバル競争で勝ち抜くためには海外現地のリソースを有効活用することが重要です。
このため、海外進出企業は特に、海外現地においても自社リソースをコア業務に集中させ、その他の業務をBPO化し、競争力を高めていくことがポイントとなります。
また、海外進出企業以外にとっても、ASEAN・アジア新興諸国は人件費などコストが安く、また技術・スキルが向上しているため、海外BPO先としての親和性が高まっています。
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海外BPOの将来性
各種の調査結果をみても、国内外を問わずBPO市場は今後も拡大を続けると予測されています。
繰り返しになりますが、少子高齢化が進む日本では、長期的に労働者の数が減少していくことが明白です。
こうした状況からみても、労働力不足を穴埋めするために、国内ではなく海外BPOへの需要がますます高まっていくと考えられます。
そして、企業は採用・育成などに必要な人件費を削減させるため、近年ではミャンマーやベトナムなど人件費が安く抑えることが可能なアジア諸国への海外BPOを検討しています。
また、ミャンマーやベトナムなど新興諸国における人材の語学力やITスキルは向上しており、日本企業からも高い評価を得ています。
今後、こうした新興諸国に業務をシフトチェンジする機会がますます増えていくものと考えられます。
ミャンマーやベトナムなど新興諸国の多くは、日本と違って若い労働力が豊富で、人口ピラミッドをみても長期間にわたって豊富な人材供給が期待されます。
人的リソースの維持・拡大や継続的な委託を考慮すると、将来にわたっての労働力確保という側面からも大きなメリットがあり、その将来性は非常に期待されています。
国内BPOと海外BPOの特徴比較
海外新興諸国へのBPOに興味があっても、ただちに採用するには躊躇する企業もあることでしょう。
国内BPOと海外BPOの特徴やメリット・デメリットの比較について解説します。
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国内BPOの特徴
多くの企業にとって、日本語対応のためコミュニケーション上の問題がないのが大きなメリットとなります。また、日本独自の商習慣や取引条件が相互に理解できるので、業務を円滑に進められるのもポイントです。
その一方、根本的な課題である人材不足とコスト高を解消するには不十分です。日本BPOは海外BPOと比較するとどうしてもコスト高となるデメリットがあります。
このため、トータルコストを考えた場合には、付加価値の高い作業分野を国内BPOでまかない、付加価値の低い作業を海外BPOに振り分けるなどの方策が重要となります。
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海外BPOの特徴
海外BPOの最大のメリットは、人件費が安価なためコスト面でのメリットが大きくなることが挙げられます。
また、豊富な若年層労働力が長期にわたって供給可能なため、将来的にも労働力の確保がさらに容易になる点も評価されています。
さらに、国ごとの時差を活用し、システム開発やコールセンターといった業務では海外拠点と連携しながら24時間対応の体制を構築することも可能となります。
一方、海外BPOの場合は国内BPOの裏返しとなります。
言語が異なるためコミュニケーションに不安がある点や、作業員全体に品質指導・管理が必ずしも行き届いてない可能性があるなどのデメリットがあります。
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海外BPOに適した業務
上記の比較から、海外BPOに適した業務は次のように整理できます。
- 時差を活用した業務
- 労働集約型の単純作業を中心とする業務
- 豊富な労働力を活かせる生産性効率の高い業務
ミャンマーにおける24時間体制のコールセンターなど、時差を活用した業務や、単純作業を中心とする業務、また大量の労働力を活かした作業を集約できる業務などが、今後海外新興諸国で最も期待できる業務といえるでしょう。
BPOが期待できるミャンマーの特徴とメリット
海外新興諸国のうち、特にBPO先として期待されるミャンマーの特徴とメリットについて解説します。
2024年7月現在、治安の悪化は否めない状況です。早く平和が訪れることを願いながら、BPOの受け入れ先としての期待が高まっている理由をご紹介します。
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日本語教育が浸透
ミャンマーでは日本語教育が盛んで、多くの若者が日本語を習得しています。日本語を学ぶ生徒の多くは将来日系企業で働くことを目的としており、高いモチベーションを有しています。
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安価な人件費とIT教育
他の海外諸国と比較しても、ミャンマーは人件費が安いため、コストが大幅に抑制可能です。
また、ミャンマー人は本当に真面目で勤勉であり、近年はIT関連の技術も習得しています。そのため単なるデータ入力ではなく、画像の加工やゲームの開発など、高度なITスキルが活用可能です。
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労働力と年功序列
ミャンマーは優秀な若者を豊富に抱えており、多くの優秀な人材が日系企業での就労を希望しています。
また、ミャンマーは敬虔な仏教国なので、日本人以上に年上を敬い、職場でも年功序列が当たり前の文化を有しています。
このため、日本企業でも抵抗なく業務に従事できる素養があります。
その他アジア諸国でのBPOの魅力
海外BPOを検討する上で最も大きな障壁となるのは地理的な問題です。
日本企業が海外BPOを活用する際に、欧米諸国は地理的な問題だけでなく、コストの問題からも課題が多い状況です。
一方、アジア諸国には豊富で安価な労働力があり、政府主導の様々な優遇政策も活用可能なことから、今後も海外BPOの中心地として発展することが予測されます。
ミャンマー・マレーシア・フィリピン・ベトナム等のアジア諸国では、データ入力やデータ処理、会計、翻訳・通訳、またITスキルを活用した画像加工、人材紹介といったのサービスが急速に拡大しています。
世界におけるBPOの進展に伴って、アジア諸国はBPOの受け皿として母国経済を発展させるだけでなく、アジア経済全体の発展に貢献するためにこうしたニーズを積極的に活用することが期待されます。
まとめ
ミャンマーなど海外新興諸国におけるBPOの現状と将来性について詳しく解説しました。
ASEAN・アジア諸国におけるBPOは、そのメリットを活かして今後も一層の拡大が期待されます。
この記事を読んで、海外新興諸国へのBPOを検討する企業は是非ご活用ください。
- 業務効率化を考える上で、まずノンコア業務から見直そう!