BPO業界の市場規模と動向
はじめに、世界と日本における、BPO業界の市場規模と動向について解説します。
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市場規模
ある民間企業の調査によれば、世界のBPO市場規模は2021年の2,511億米ドルから、2028年には4,924億5,000万米ドルに達し、2022年から2028年までの予測期間中のCAGR(Compound Average Growth Rate:年平均成長率)は10.1%になると予測されています。
参照:株式会社グローバルインフォメーション「ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)の世界市場:サービスタイプ別、最終用途別、地域別-予測および分析(2022年~2028年)」 公式サイト
一方、各種市場調査の国内大手である(株)矢野経済研究所の調査結果(2023年11月14日リリース)によれば、2022年度の国内BPO市場規模は前年度比3.0%増の4兆7,021億円となっています。
参照:矢野経済研究所「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査を実施(2023年)」 公式サイト
両者を単純に比較すると(1ドル=160円と設定)、2022年には世界が44兆1,936億円となり、日本が4兆7,021億円ですから、日本が世界に占める市場規模のシェアは約9.4%という計算になります。
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動向
世界におけるBPOの動向をみると、変化を続けるビジネスダイナミクスに対応するため、各国の企業は効率性を追求し、またビジネスの俊敏性・瞬発力を高め、営業経費の削減を図るとともに、自社のコアビジネス(中核)となる能力を醸成することに注力することで、継続的な市場の成長が見込まれています。
日本の動向をみると、少子高齢化に伴う恒常的な人材不足や専門知識が求められる事業が増加していることなどの背景により、BPO業界の市場規模は今後も増加するとみられます。
さらに、DX(デジタルトランスフォーメーション)化や経営環境のグローバル化に伴ってIT技術の専門的な知識やスキルがより一層求められる状況となっていることも、BPO業界の市場規模拡大の裏づけとなっています。
BPOの将来性(国内)
国内におけるBPOの将来性をみると、少子高齢化による人材不足や、労働契約法の改正や働き方改革の推進、ライフワークバランスの変革などの影響もあり、BPO業界の市場規模は今後も拡大することが確実です。
中でも少子高齢化の問題は深刻な状況にあります。内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によれば、日本の総人口は令和52年時点で8,700万人にまで減少する見込みです。
内訳をみると、同年には65歳以上の人口が国民の2.6人に1人であり、かつ約4人に1人が75歳以上の後期高齢者になると推計されます。今後も少子高齢化は一層拡大し、多くの業界で人材不足が深刻化することが明白です。
参照:内閣府「令和5年版高齢社会白書」
また、労働契約法改正による無期労働契約への転換や、働き方改革による時間外労働の上限という状況も、人材確保の障害に拍車をかけています。
こうした状況から、企業のノンコア業務や専門知識が必要な業務を外部委託することを主眼とするBPOは、今後も企業の業務効率化を図る上でますます重要視されると考えられます。
さらに、DX促進の流れもBPO市場の活性化と親和性が非常に高いポイントです。日本企業におけるDX化は世界との距離があるため、政府が後押しして企業のDX化を強く推進しており、この動きがBPO市場拡大に影響を与えるとみられます。
世界と日本におけるBPOに対する認識の違い
世界と日本におけるBPOに対する認識の違いについて解説します。
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市場規模と成長率の違い
市場規模の違いについては上述のとおりですが、市場の伸び率をみると世界と日本ではかなりの差異があります。
世界市場は2022年から2028年までの年平均成長率が10.1%であるのに対し、日本は2022年と2023年を比較すると3.0%に留まっています(前述の矢野経済研究所データによる)。
この背景として、世界ではデジタルBPOやAI連動など、先進テクノロジーへの取り組み姿勢がより積極的であることなどが挙げられます。
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認識の違い
認識の違いという点では、「BPOへ期待する効果」への期待度が挙げられます。
やや古い資料ですが、経済産業省データ(「ビジネス支援サービスの活用」)によれば、日米での比較では日本は戦略的なBPO利用の意識が低い状況です。
日本では、経営資源のコア業務への集中や、業務拡大に対する柔軟な対応への理解がアメリカよりも10%以上低い一方、コスト削減や業務の効率化についてはむしろアメリカより高い状況となっています。
このことから、日本企業の多くはなおBPOを単なる「コスト削減の手段」と認識しており、デジタルBPOやAI連動など、戦略的なBPO利用の意識が低いことが課題として挙げられます。
参照:経済産業省「ビジネス支援サービスの活用」
日本のBPO市場が抱える課題
日本のBPO市場が抱える主な課題について解説します。
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人材の処遇
日本の場合、欧米諸国と比較すると従業員の雇用や解雇に関する法律上の制限が非常に厳しいことが挙げられます。
このため、企業がすぐに大胆なBPOを採用したい場合でも、制度上簡単に従業員を解雇できず、その結果人材整理が進まないことにより、外部にBPO業務を委託するのに限界が生じます。
BPOを導入すれば、従来当該業務を担当していた社員の仕事が奪われ、社内での配置転換などで対応するしかありません。このため、人材の処遇が難しくなるのが日本特有の課題です。
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BPO事業者への評価
自社業務の一部を外部へアウトソーシングする際には、BPO事業者と強い信頼関係を構築することがポイントとなります。
その一方、日本企業の多くはBPO事業者に対する信頼感が低いのが課題となっています。
日本企業は伝統的に家族的な経営を好み、正社員を大切に扱う文化・風土があります。このため、BPO事業者への理解が不足しています。
こうした状況を改善するには、BPO事業者への理解を深め、その能力を客観的に評価できるような仕組みを取り入れることが重要です。
まとめ
世界と日本におけるBPO市場規模や取り組み意識の差異と課題などについて詳しく解説しました。
少子高齢化による人材不足や働き方改革、またIT・AI関連事業の拡大などを背景に、BPO市場は今後ますます拡大すると考えられます。
多くの企業がBPOをよく理解し、積極的に取り組むことで、事業の継続・拡大へとつなげることが可能となります。
この記事を読んで、BPO活用に期待する企業は是非お役立てください。
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