インボイス制度で生まれたBPOとは
インボイス制度は取引で発生した消費税率を正しく把握し、不正・ミスを防ぐための制度です。インボイス制度が新たに導入されたことにより、経理部門などは新しいフォーマットに対応するよう請求書に関する業務が増えています。これにより、外部へ任せる方が好ましい業務が出てきました。
インボイス制度によって生まれたBPOサービスとして次が挙げられます。
- 登録事業者番号収集
- 事務業務
- コールセンター
では、それぞれの主なサービスはどういった内容なのかを解説していきます。
-
登録事業者番号収集
インボイス制度では取引先への 請求書などの支払明細書に、その取引先の登録事業者番号を記載しなければなりません。普段から取引する企業数が少ないと業務の負担となりませんが、取引先数が数百・数千・数万と規模に比例して業務の負担は増します。
実際に、インボイス制度が始まるまでに登録者番号の有無や該当番号を1社ごとに確認しなければならない現状があり、業務に追われた経緯があります。
そこで、登録事業者番号を収集するサービスが生まれました。登録事業者番号は企業ごとに決まっていることから、BPO企業はデータベースから番号を取得できます。また、BPO企業では登録事業者番号収集以外にも付随する事務作業なども代行しているケースもあります。
-
事務業務
インボイス制度の開始や電子帳簿保存法により、取引先との請求書のやり取りが複雑化・煩雑化しています。そのため、インボイス制度に対応したつもりでも適切でなければ適格請求書発行事業者と認められない可能性があります。
場合によってはインボイス制度に対応できていないことがきっかけで取引が減少することも起こり得るため、インボイス制度に付随するさまざまな事務作業を代行するBPO企業も登場しています。
なお、制度や方向性に伴う変更点を網羅したうえで請求書受領や発行業務を代行することにより、委託元は大幅な工数削減に繋がります。
-
コールセンター
インボイス制度はさまざまな企業が関わっていることから、そのルールを適切に把握していないケースも多いです。また、規模が大きな企業の場合はどのように対応すれば良いか取引先から問い合わせが集中する可能性もあります。
自社で全ての問い合わせに対応すると大きな業務負担となり、コア業務が滞ることになりかねません。そこで、インボイス制度を専門に扱うコールセンターを利用することにより問い合わせ対応の負担を軽減できます。
インボイス制度においてBPO導入で任せられる業務
インボイス制度の開始による業務の変更点が負担になっている場合、BPO導入で解決できる可能性があります。インボイス制度において、BPO導入で任せられる主な業務は次の通りです。
- 伝票・仕訳入力
- 支払代行
- 請求書作成・発送
- 入金消込
- 決算業務
-
伝票・仕訳入力
伝票・仕訳入力は経理の基本的な業務であり、これまでも経理BPOとしてさまざまな企業が対応しています。デジタル化が進んでいるとはいえ、今でも手書きの伝票は多く存在しており、データ化するために手入力している現状です。
このような業務の代行やデータ入力後における各項目の仕分けなどにも対応しているため、活用することで業務負担を大幅に軽減できるでしょう。
-
支払代行
取引先への支払い情報を作成する業務もBPOとして活用できます。一般的に、経理業務では作成した支払いデータをもとにインターネットバンキングなどを活用して送金します。
ただし、BPO企業に対する統制を維持するためにも支払いデータの作成までに留め、送金は自社で対応するケースは少なくありません。
-
請求書作成・発送
インボイス制度で大きく変わったこととして、請求書の内容が挙げられます。制度に対応するためには適格請求書を発行・受領しなければならず、通常でも販売・納品データをもとに請求書を作成して発送します。
その点において、BPO企業を活用することにより正確に請求書を作成した上で発送することが可能となります。
-
入金消込
一般的に顧客の注文が完了すると売上として計上されますが、まだ入金がない状態では「売掛金」として扱われます。そこから入金が完了したときに売掛金としてのデータを消去しますが、その際の作業が「入金消込」です。
インボイス・経理に特化したBPOであれば共有するために電子化されたデータを扱うケースが多く、仕分け業務だけでなく入金消込にも対応しています。また、企業によっては独自の経理システムを活用しており、入金消込を自動化しているケースもあります。
-
決算業務
一般的に決算期は他の時期と比較して忙しくなりやすく、かつインボイス制度の開始によりその煩雑さは増すでしょう。決算業務は会社の経営状況を把握し、全取引をまとめることから経理と密接な関係があります。
例えば、決算業務では決算残高や税金の計算が必要になるため、インボイス制度の影響を受けると考えられます。インボイス制度の開始に伴い、経理業務でBPO活用を検討する際は決算業務の対応有無を確認しましょう。
インボイス制度にBPOを導入するメリット
ここからは、インボイス制度にBPOを導入するメリットを紹介します。
-
ミスの軽減が期待できる
経理業務は正確性が求められ、自社の人員が不足している場合は採用後に適切な研修を実施して教育しなければなりません。また、新たに登用された従業員であればミスをする懸念も残ります。
そこで、経理業務を専門に行うBPO企業に委託すると、既に知識・スキル・ノウハウがあるためミスの軽減が期待できます。
-
業務効率化が図れる
BPOの活用により人員不足を解消できるだけでなく、業務効率化を図れます。一般的に経理はノンコア業務であり、人員や時間を割くとコア業務に充てるリソースが不足しますが、BPOを活用して経理業務を外注することで、自社のリソースを有効活用できるのです。
また、長期的にBPO化すると自社のリソースの適正化を図れるため、自社全体の業務効率化を実現できます。
-
コスト削減に繋がる
経理業務はミスが許されないことから、自社の従業員で対応する場合は研修・教育に時間を要します。 実際に現場で作業するようになっても、初期の段階は先輩社員などの確認が必要になり業務時間が膨張しやすいです。
そこで、経理の知見があるBPOを活用することで、採用・教育コストを大幅に削減できます。
インボイス制度でBPOを導入した事例
国内の老舗の製造業で全国に複数の拠点があるA社では月に対応する請求書の枚数は2,000枚、明細書に関しては約3万件もあり、これらの書類を自社の社員が毎月処理していましたが、インボイス制度の開始により業務負担はキャパオーバーする懸念が出てきました。
そこで、経理BPOを活用することで効率化を図りました。その際は作業手順やルールを明確化して、社内システムの入力形式を統一することで今までの業務を見直しました。その結果、効率化を図れただけでなくシステムが整備されたことでリモートワークに対応できるようになるなど、業務環境が改善されたのです。
まとめ
この記事では、インボイス制度で生まれたBPOを紹介しました。経理を専門的に扱うBPOを活用することにより、自社の人材不足の解消やコア業務への集中などのメリットがあります。
インボイス制度で業務負担が増しており課題に感じている場合は、ぜひBPOの活用を視野に入れてみてください。
- 業務効率化を考える上で、まずノンコア業務から見直そう!