地方自治体がBPOを取り入れたきっかけ
BPOの活用にはコスト削減や業務効率化といったメリットがあります。地方自治体では近年のIT化・デジタル化の推進に伴い、BPOを導入するケースが増えてきています。
特に、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大により、ワクチン接種の手配や地域住民からの問い合わせ対応、さらには補助金への対応や飛沫感染対策といったさまざまな業務に追われるようになったことが導入のきっかけです。
BPO活用により従来の地方自治体のキャパシティを超える業務にも対応できるようになるため、導入するケースが飛躍的に増加したのです。
地方自治体でBPOが注目されている理由
地方自治体でBPOが注目されている主な理由は次の2つです。
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ニーズの多様化
現在ではインターネットの発達やSNSの普及により、地域住民がアクセスできるチャネルが増加しています。今まで通り電話による問い合わせや役所を訪問する人がいる一方、Web上やLINEなど特定のコミュニケーションを活用する人は少なくありません。
また、生活のさまざまなシーンがデジタル化することでニーズが多様化しており、既存の自治体の設備・能力では対応できないことでもBPOの活用によって課題を解決できます。
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人材不足の改善
業務量に対して職員の数が少ないなど、人材不足に悩む自治体は少なくありません。
人手が足りない状態でも日々対応しなければならない業務は減らないため、深刻な問題に発展しつつあります。
そこで、BPOを活用することで人手が増し、既存の職員数を超える業務にも対応できます。
地方自治体でBPOを導入するメリット
地方自治体でBPOを導入する主なメリットは次の6つです。
- コア業務に注力できる
- 委託単価が安くコスト削減に繋がる
- 専門的な知識・スキル習得に繋がる
- 行政サービスの質向上に期待できる
- 人手不足の解消に繋がる
- 地域の発展に貢献できる
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コア業務に注力できる
BPOを活用することにより、地方自治体に限らず民間企業でもコア業務に注力できる時間が増えます。特に、地方自治体では毎月固定で発生する事務作業だけでなく、各種制度の申込期限などは繁忙期になり日々対応に追われるケースが珍しくありません。
その際に、BPOで事務処理を外注できると地域サービスの品質向上に繋がる、中核の業務に集中できるのです。
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委託単価が安くコスト削減に繋がる
BPOの導入により業務負担の軽減が見込めるだけでなく 、委託する企業によってはコスト削減にも繋がります。
例えば、各自治体で職員やアルバイトを採用して人員を増やす際、人件費だけでなく業務を覚えるための教育・研修にもコストが発生します。そこで、すでに知識・スキルを持つBPO企業に委託することでコスト削減に繋がるのです。
なお、地域共創BPOは一般的なBPO企業よりも単価が安く設定されているケースが多いため、コストを抑えて依頼できます。
他にも、自治体が外部企業へ委託する際、競争入札が行われることもコスト削減に繋がる理由です。
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専門的な知識・スキル習得に繋がる
地方自治体の職員は公務員で構成されており、副業禁止などの制限があることから一般的な企業と比較して外部からの知見が入りにくい傾向にあります。
その点、BPO導入により専門的な知識・スキル・ノウハウを持つ企業と関われるため、新しいナレッジを取り入れることが可能です。得たものを有効活用することで、地域により貢献できるサービスの提供に繋がります。
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行政サービスの質向上に期待できる
BPO導入によって業務プロセスを一括で外部に委託すると、既存の職員をコア業務に配置しやすくなります。
その結果、地域住民や役所の利用者に対して、よりきめ細かな対応が可能になり、行政サービス全体の品質向上に繋がるでしょう。
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人手不足の解消に繋がる
自治体の中で、人材不足が深刻化している地域は少なくありません。一人あたりの業務量が増えて長時間労働になることで職員が疲弊してしまい、それが原因でヒューマンエラーが発生しやすくなると重大な事故・問題に発展しかねません。
そこでBPOを導入すると人手が足りていない業務を補完できるだけでなく、人材採用を得意としている企業と手を組むことでリソースの確保に繋がるのです。
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地域の発展に貢献できる
その地域に根付いた地域共創BPOを活用すると、地元での雇用創出に繋がります。
自治体と地元企業が手を組みリソースを確保することでビジネスが活性化すれば、地域の発展にも貢献できるでしょう。
地方自治体でBPOを導入する際の注意点
地方自治体でBPOを導入するメリットは多いですが、活用すれば必ず上手くいくわけではありません。そこでここからは、地方自治体でBPOを導入する際の注意点を紹介します。
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自治体業務の実績が多い先を選ぶ
業務の委託先を決める際は、該当する自治体業務の実績が多いBPO企業を選びましょう。
自治体業務の知見がない企業を選んだ場合、教育・研修に時間がかかったり、余計なコミュニケーションコストが発生したりする可能性が否めません。
また、業務に慣れるまでの期間は 他の問題が発生し得ることも懸念点の一つです。
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セキュリティ体制を確認する
地方自治体の業務の中には、地域住民の個人情報を扱うケースが珍しくありません。
大切な情報を扱う業務を外部企業に委託する場合、細心の注意を払わなければ委託したBPO企業が個人情報を漏えいしてしまい、自治体の信用は失墜する可能性があります。
確固たる信用を築きあげていくためにも、盤石なセキュリティ体制を構築している企業を選ぶことが望ましいです。
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請け負える業務の幅広さを意識する
複数の業務に対してBPOを検討している場合は、請け負える業務の幅広さを意識しましょう。もちろん、各業務を得意としている別々の企業に委託することも可能ですが、外注先が複数になると管理工数が余計に発生してしまいます。
また、委託した複数の企業の中で一つでも体制やセキュリティに不安がある場合、重大な事故に発展しかねません。
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ランニングコストがかかる
BPOでは業務を委託し続ける限り外注費用が発生するため、依頼を継続する場合は常に費用対効果を意識し続ける必要があります。
自治体にとってコストを抑えることは重要ですが、そればかりを意識して業務の品質が低下してしまうのは 本末転倒です。
発生するランニングコストを意識してBPO企業を選ぶことが、結果的に利益をもたらすと言っても過言ではありません。
地方自治体でのBPO事例
最後に、地方自治体でのBPO事例を3つ紹介します。
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千葉県白井市
千葉県白井市では、国民健康保険・国民年金・後期高齢者医療の申請などの業務でBPOを活用しています。
少子高齢化や医療制度の改革によって業務量が増えており、窓口業務の長時間化が課題になっていたところ、BPOを導入することにより来庁者の待ち時間を最大1時間から20分程度に短縮でき、サービスの品質が向上したのです。
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福島県須賀川市
福島県須賀川市では地域サービスの品質向上のために、公金収納業務で金融機関の窓口納付・口座振替・スマホ決済の導入を進めていた経緯があります。
その中でも口座振替の希望者が多く、その処理件数は毎年3,000件にも及び、職員の負担は大きくなっていました 。
そこで、口座振替申請のオンライン化に関するBPOの導入したことで業務負担が軽減できただけでなく、今では地域住民のニーズにも対応できるようになりました。
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大分県大分市
大分県大分市の市役所市民課税課では、オンサイトで事務業務を委託するBPOを導入しています。
繁忙期である4月・5月には100時間以上の時間外勤務が発生していたことが、BPOを導入したきっかけです。
そこで、BPOの活用により100時間の時間外勤務は50時間、月によっては30時間までに削減できています。
さらに、事前にマニュアルを用意したことによりスムーズに外注へ移行でき、効率化を図れる業務フローの構築にも繋がっています。
まとめ
この記事では、地方自治体がBPOを活用するメリットについて解説しました。各地方自治体が抱えている課題はBPO活用で解決に繋がり、結果として地域住民へのサービスが向上する可能性を秘めているのです。
まだ活用していない自治体も現状の課題を解消する一つの手段として、BPO導入をおすすめします。
- 業務効率化を考える上で、まずノンコア業務から見直そう!